ユウとショータと校長先生
沈みかけた太陽を背に歩く、二人の少年。おそろいのブレザーに身を包み、同じような黒い鞄を持っている。二人が親密な間柄なのではなく、同じ高校に通っているためだ。
「なあ」
黒髪の背が高い方が、連れに声をかける。
「ん?」
少し背の低い茶髪が、呼びかけた少年に視線を向ける。
「今日の校長先生の話、つまんなかったな」
黒髪は視線を進路に向けたまま、今日の全体集会の感想を述べた。
「いつもだけどな」
「聞いていないのにつまらないかどうか、分からないじゃん」
茶髪も黒髪から視線を外し、前に向ける。
「つまらなかったけど」
「そんな気がしてたわ。聞かなくて正解だな」
茶髪の付け足しの言葉に、なぜか誇らしげな黒髪。
「寝ててジャージに起こされたのも正解?」
ジャージとはある国語教師のあだ名だ。
「気持ちよく寝てたんだ、起こさなくていいのに」
背の高い方はため息をつく。
「寝てていい時間じゃないから」
茶髪もため息をつく。静かに起きていれば、何もとがめられやしない。聞いていなくとも。
「ジャージもただ座ってりゃ寝るぞ。あいつが起きてられるのはうろうろ歩き回ってるからだ」
「不審者みたいな言い方だね」
ジャージ以外にも数人歩き回っている教師はいる。みんな眠気防止だとしたら、落ち着きのない学校だ。
「生徒だったら怒られてる」
黒髪は不満げだ。
「歩き回りたいの?」
茶髪の問いに黒髪は答える。
「寝たいからいいや」
END