テンドン
「トンチキー様と、冒険者の方々を御案内した。
では皆様、私はこちらで失礼致します。」
屋敷の玄関扉を開けて、
冒険者ギルドのマスターであるトンチキーと、
コインら一行を案内した警備兵のビアンゴは、
中に控えていたメイドに、そう告げると、
皆に一礼をしてから、通常の職務である、
門の警備へと戻って行った。
「はい、畏まりました。
いらっしゃいませ皆様、
こちらからは、当屋敷のメイド長を御務めさせて頂いて居ります
私『ラザーニア』が御案内をさせて頂きます。」
ビアンゴの言葉を受けたメイドが、
コインらに向けて、そう告げる
紺色のベースとなる服に、
白いリボンをワンポイントにあしらったという
歴史を感じさせる趣があるメイド服に身を包んだ、その女性は、
30歳そこそこに見える、ドワーフ族の女性であった。
「よう!ラザーニア、案内の方頼むぜ」
「はい、畏まりました。トンチキー様」
一行は、ラザーニアの案内で玄関ホールの正面に位置していた
大きく美しい飾り細工が施された階段を上ると、
これまた見事な彫刻が成された豪華な扉を開けて、
応接室と見られる部屋へと通された。
「ただ今、主人をお呼びして参りますので、
こちらで、お寛ぎをしながらお待ち下さい。
『ニョッキ』、皆様に御茶をお出しして」
ラザーニアは、コインらにソファで寛ぐ様告げると、
応接室に控えていた部下のメイドに命令してから、
応接室を後にした。
「皆様、紅茶とコヒ茶が御座いますが、
如何なさいますか?」
ラザーニアよりの指示を受けた
若いドワーフ族のメイドが、
ソファへと腰を下ろした一行に問い掛けた。
「よう!ニョッキ、相変わらず元気そうだな、
俺は、いつもの様にコヒ茶で頼むわ」
「私は紅茶で、お願いする」
「紅茶」
「じゃあ、オレも紅茶にするかな」
「僕は、コヒ茶でお願いします。」
「はい、ありがとう御座います。トンチキー様
皆様よりのご注文、承りました。」
ニョッキが、皆の注文通りに飲み物を淹れて、
其々の前のテーブル上へと並べたので、
それを飲みながら、軽い歓談をして待つ事となる・・・
そのまま待つ事15分程度、
先程のメイド長ラザーニアが、主と共に応接室へと戻って来た。
「皆様、お待たせいたしました。
主のタメゴロ様が参りましたので、宜しくお願い申し上げます。」
「おう!ご苦労だったなトンチキー、
冒険者の皆も、ご足労感謝する、
俺が、この『ガンセキの街』の代表を務めるタメゴロだ!宜しくな!」
ギル・マスのトンチキーの兄だけあり、
良く似た風貌で、一回り体を大きくした感じの男が、
そう、皆へ挨拶の言葉を述べながら応接室へと入って来る、
また、その背中には、
どこかで見た様な形をした、木の棒が背負われていた。
「おう!兄貴、腕っききの連中を連れて来たから、
期待して良いと思うぜ」
「冒険者パーティー『殲滅の乙女団』のポラリだよ、
宜しくね街長さん」
「パサラ」
「久し振りっす街長さん、
オレは、ブラック村出身のサナエっす。」
「僕は、コインって言います。
宜しく、お願いします。」
皆がソファから立ち上がって挨拶を返すと、
街長のタメゴロは、気さくに再びの着席を促し、
自らも、空いたソファへと腰を下ろした。
「やっぱり、それも『聖剣』なのかい?」
街長が、ソファへと腰を下ろす際に、
背中より下ろして、ソファの肘掛へと立て掛けた棒を、
指差しながらポラリが尋ねる
「如何にも!
これこそは、トンチキーより紹介して貰った行商人より、
800万ギルという、お値打ち価格で特別に譲って貰った
『聖剣バック・スクラッチャー』である!」
「やっぱ、そのパターンなのかい・・・」
「お約束」
「おおっ!やっぱカッキ~な!」
「もう『マゴの手』言っちゃってんじゃん!」