ご休憩処
「姉さん方、これから如何しますか?」
サナエの冒険者カードを、
街の入り口に居た警備兵へと提示し、
無事に『ガンセキの街』へと馬車を乗り入れたサナエが、
馬車の中に居る、ポラリとパサラに問い掛ける
「そうだな~、今の時間帯だと、
丁度、クエストを終えて街に帰って来た連中で込んでるだろうから、
コインの冒険者登録は、少し時間を遅らせてから行った方が良いだろうな、
という訳で、まずは今夜泊まる宿探しになるんだが、
何処か、サナエお薦めの宿ってあるのか?」
「ご飯が美味しい所、限定」
「それだったら、良い宿がありますよ、
親父と一緒に来た時に泊まってた宿なんですけど、
メシは美味いし、大浴場はあるし、
大きな厩や、馬車を停める大スペースもあるから、
商人とかにも人気の宿なんですよ」
「へ~、そりゃ良さそうだね」
「そこで良い」
「お風呂に入れるのは嬉しいですね」
『キュキュ~!』
「そんじゃ、その宿に向かって良いですか?」
「ああ、向かってくれるか」
皆の賛同を得たので、
馬車の御者を務めているサナエは、
サクラとバサシに、宿の方向へと向かう様に指示を与えた。
「皆さん、あそこに見えて来た大きな建物が、
さっき話した今夜泊まる宿の『ホテル ニューエンペラー』ですよ」
「随分と、仰々しい名前の宿だね」
「私が泊まるのに相応しい名」
「何か、ラブホみたいなネーミングですけど、
コッチの世界的に、不敬罪みたいのとかは大丈夫なんですか?」
「ラブホ?それは聞いた事が無いけど、
今、この世界シエラザードには皇国が存在しないから、
この名前でも大丈夫って聞いたよ」
「そうだな、今は王国と共和国の他は、
ここ、魔法国しか無いからな」
「やがては『パサラ皇国』が興る」
「へ~、そうなんですね」
「いらっしゃいませ、お客様方、
ホテル前のロータリーをグルリと回られて、
入り口前で御停車頂きまして、荷物等を従業員へとお預け頂きましたら、
馬車の方は、こちらでお預かり致します。」
コインらが乗った馬車がホテルへと近づくと、
入り口前に居た従業員が近づいて来て、そう告げた。
「ああ、分かったよ」
サナエは、従業員の指示通りに馬車を回すと、
ホテルの入り口前で停車させた。
「姉さん方、着きましたよ」
「荷物は、ここで預かってくれるそうです。」
御者台のサナエとコインが、馬車の中へと声を掛ける
「へ~、そうなのかい、
随分とサービスが行き届いているんだね」
「うむ、善きにはからえ」
一行は、従業員たちに荷物を預けると、
宿泊手続きを済ませる為に、受付カウンターへと向かった。




