昔馴染み
「おっ、やっとこさ、今夜オレ達が皆で泊まる予定の、
『ガンセキの街』が見えて来たぜ、コイン」
御者台で馬車を走らせていたサナエが、
隣に座るコインに、そう告げる
「何とか暗くなる前に到着する事が出来て良かったですね」
本日の道程での途中、パサラ作による呪いのワラ人形騒動があったため、
陽が明るい内での到着が危ぶまれていたが、
何とか、本日の目的地である『ガンセキの街』へと、
陽が落ちる前に到着する事が出来たコイン一行であった。
「コインは、あの街で冒険者登録をしちまうんだろ?」
「ええ、早い方が良いってポラリさん方にも言われてるんで、
そうする心算ですよ」
「そうだな、余り強い魔獣が出て来る事は無いから、
大したポイントには、ならないとは言え、
旅の途中で出て来た魔獣を倒せば、
ギルドカードに討伐記録が残るからな、
無駄にするのは勿体無ぇぜ」
「ええ、『塵も積もれば・・・』って言いますからね」
2人が、そんな会話を交わす間も、
2頭立てで馬車を曳く、サクラとバサシは順調にパカパカと歩を進め、
街をグルリと囲む防護壁の、街道に面する部分にポッカリと開いている、
街への、入り口の門の前に立ち警備をする、
革鎧に身を包んだ、2人の兵士らしき者らの姿が見えて来た。
「すいませ~ん!馬車で街に入りたいんですけど、
宜しいでしょうか?」
兵士らしき者らの姿が、大分、大きく見える様になった段階で、
コインが、大きな声をだして、そう問い掛けた。
「おう!一度、馬車を停めて身分を証明する・・・ん?
その隣に居るのは、もしかしてブラック村のサナエちゃんか?」
コインの問い掛けに応える兵士の一人が、
返答の途中で、そう告げる
「うん、久し振りだね、門番のオッチャン」
「ホント、久し振りだな、
前に、配達に来た親父さんから、
どこか他の国に行って、何とかっていう、
有名な冒険者パーティーに加入したとか聞いたと思ったんだが、
今日は、クエストか何かで来たのか?」
「ううん、そのパーティーは事情があって辞めちまったんだけど、
今は、新しいパーティーに入れて貰ったんで、
その仲間たちと一緒に、首都のダンジョンに潜りに行く途中で寄ったんだ。」
「ふ~ん、そうなのか、
聞いた話じゃ、ツクバーダのダンジョンは危険だっていう話だから、
サナエちゃん達も、十分に気を付けるんだぞ、
そんじゃ、一応は規則だからサナエちゃんの冒険者カードだけでも、
確認させて貰えるかな?」
「全員分じゃ無くても良いんですか?」
サナエのカードだけで良いという兵士に、コインが尋ねる
「ああ、ここだけの話だが、
俺は『悪意感知』のスキルを持っているから、
犯罪者が近付いて来たら、それだけで直ぐに分かるんだよ、
サナエちゃんのカードを確認するのは、
子供の頃から知ってるサナエちゃんが、
立派な冒険者になったって感動したいが為だな」
「なんか、良い話や~」