その娘、危険につき・・・
「おっ、やっとこさシロミミのヤツが、
娘のサナエを連れて来たみたいだぞ」
村長の言葉で、村の集会場の入り口へと目をやったコインの耳に、
何かしらの騒ぎが起きているのが聞こえて来た。
「シロミミさんの娘さんの名前って、『サナエ』さんって仰るんですか?」
「ああ、そうだが、その名前が如何かしたのか?」
「い、いえ、僕の出身地でも良くある名前なんで驚いただけです。」
「そうか、何でもシロミミ達が前に暮らして居た
村辺りの方言で『すくすくと育って欲しい』みたいな意味だって、
確か、聞いた事があるな」
「へ~、そうなんですか」
(もしかすると、シロミミさん達が暮らして居た村辺りに、
日本からの転生者だか転移者が居たのかな・・・?)
「どうやら、俺の読み通りに、
中々シロミミ達が来なかったのは、
サナエのヤツが愚図ってたからみてぇだな・・・」
村長の視線と言葉に、
再びコインが集会場の入り口へと目をやると、
シロミミと、シロミミに首根っこを摑まれた
コインと同年代ぐらいに見えるネコミミ少女が、
何やらか、言い争っているのが見え聞こえて来る
「四の五の言ってねぇで、
とっとと村長ん処に顔を出せってんだよ!」
「は~な~せ~よ~!オレはマタタビの枝を齧りながら、
自宅を警備するっていう大切な任務があるんだから、
行かねぇってんだろが!」
「何が、自宅を警備するだ!
呪いが解けなくて、ウチで愚図ってるだけじゃねぇか!」
「オレの事は、もう放っといてくれよ!
オレは、自宅警備道を極めて、
行く行くは、自宅警備隊長に就任する予定なんだからよ!」
「訳の分からねェ事を言ってねぇで、
とっとと俺と来いってんだよ!」
少女は、シロミミに首根っこを掴まれたまま、
ズルズルと、こちらの方へ引きずられて来た。
「は~な~せ~!くっそ~!
万全な状態のオレだったら、
クソ親父に、こんな遅れは取らねぇってのによ!」
こちらの方へと近づいて来たので、
良く見える様になって来た少女の容貌をコインが確認すると、
父親のシロミミに良く似た色合いのネコミミと、
父親のシロミミの髪の色が茶色系なのに対して、
髪の色合いは母親似なのか、ネコミミと同じ様な色をした髪色のサナエは、
より一層、日本のオリジナルが可愛がっている、
愛猫の『トトメス』に良く似ていた。
「おい!サナエ、
もう、ここまで来ちまったんだから、
そろそろ観念して、俺達の話を聞けや」
尚も、ジタバタとして父親のシロミミの拘束から抜け出そうとして、
もがいているサナエに対して、村長が、そう声を掛ける
「あっ、村長さん、ちぃ~す!」
「それを言うなら『今晩は、村長さん』だろうが!」
軽いノリで、村長に挨拶をするサナエの頭に、
お叱りの言葉と共に、ゲンコツの雷が落ちる
「痛ってぇな!クソ親父、
オレの、優秀な頭がパーになっちまったら如何してくれんだよ!
自宅警備隊長に就任出来なくなっちまうだろうが!」
「何か、日本のテレビ番組の『昭和の特集』とかで見た
当時の、ドラマやコントを見ているかの様な、やり取りだな・・・」




