獣魔契約
「ファー・・・ファー、ちょっと、
お願いしたい事があるんだけど起きてもらっても良いかな」
コインは、コインに寄り添って、
丸くなって昼寝をしていたファーの体に、
ソッと手を添えると、軽く揺すりながら、そう告げた。
『キュ・・・キュッ?』
ファーは昼寝から目を覚ますと、
『何の様なの?』とでも言う様に小首を傾げる
「前にもやった事があるらしいんだけど、
シロミミさんの娘さんに、
もう一度『浄化』の魔法を掛けてもらっても良いかな?」
『キュキュ~!』
ファーは『良いよ!』と言う感じで、
右前脚を上げながら、コインに返事を返した。
「ありがとな、ファー
今、シロミミさんが娘さんを連れて、ここに戻って来るから、
一つ、お願いするよ」
『キュッ!』
「ガハハハッ!コインも大分、
ファーとコミニュケーションってヤツが取れる様になって来たみたいだな」
「ええ、お借りした部屋にファーと行ってから、
色々と話し掛けたりしながら試してみたんで、
『何となく、こう言ってるのかな?』ぐらいには分かる様にはなりましたが、
村長さんみたいに、普通に会話を成立させるには、
まだまだ、無理がありますね」
「ガハハハッ!そりゃそうだろ、
俺と、ハヤイのヤツが話せる様になるまでだって、
大体、半年ぐらいは掛かったからな・・・」
「半年でも、大分早いんじゃ無いんですか?」
「まあ、そうだな、
冒険者なんかのテイマー職をしているヤツとかが、
魔獣と獣魔契約を交わしたりすると、
早く話せる様になるとか聞いた事があるが、
一般人が一緒に暮らしてるぐらいじゃ、かなりの時間を要するだろうな」
「そうなんですね、そうすると、
僕も、冒険者に登録したら、
ファーと獣魔契約を交わしといた方が良いんですかね?」
「かもな・・・俺が知らないだけで、
他にも何かの利点があるかも知れんしな」
「そうですね、その辺は冒険者ギルドの窓口ででも色々と聞いてみますよ、
それにしても、シロミミさんと、娘さん、なかなか来ませんね?」
「ああ、シロミミん処の娘は、
この村に帰って来てからと云うもの、
大分、拗ねてグレちまってたから、
家から連れ出すのに苦労しているんじゃねぇか?」
「そう言えば、娘さんが掛かっちゃったっていう
呪いの種類を聞き忘れていましたが、
一体全体、如何いった類の呪いだったんですか?」
「ああ、そいつぁ何でも、
スキルを含めたステータスが、通常時の3分の一ぐらいに、
低下しちまうっていうもんだったらしいぜ」
「それはまた・・・かなり大変そうな代物ですね」
「ああ、幸いにも元々が身体能力が高い獣人だったから、
普通に生活する分には、何とかなってたみてぇだが、
冒険者としては、とてもじゃ無ぇが通用しねぇだろうな・・・」
「流石、獣人の方の身体能力は凄いですね、
僕なんかが、全てのステータスが3分の一とかになったら、
多分、普通に立って歩くのさえも儘なりませんよ」