タマ無し奴隷(どれい)
「そんな大きな声で、怒鳴らなくても良いじゃないですか~」
「俺は、今は亡きコイン君の心の声を代弁しただけだよ、
それで、女神ちゃん(小)の手違いで玉族に生まれ付いたコイン君は、
何で命を落とす事になったんだ?」
「はい、コイン君が生まれた玉族というのは古くからの戦闘民族でして、
15歳の成人の儀に、近くの街から鑑定スキルを持った人を招待して、
新成人の所持スキルを鑑定して貰うんですが、
その時に、戦闘系のスキルを持っていなかった人は、
弱き血を後世に残さない様にタマタマを抜かれて奴隷堕ちするんですよ」
「怖っ!玉族、怖っ!」
「そこで、戦闘スキルが無かったコイン君は、
同じく、戦闘スキルが無かった数名の仲間と共謀して村からの脱出を謀り、
辛くも追手の手からは逃れる事が出来たんだけど、
誤って崖から転落をしてしまい、若くして命を落としてしまったのよ」
「うん?崖から転落したにしては、キレイな体だな・・・」
溜太は、自らの魂が収まったコインの体を見下ろしながら、そう言った。
「そこはそれ、この優秀な女神ちゃん(小)の力で、
チョチョイのチョイと修復をしたって訳よ」
「そんな凄い力を持ってるんなら、
コイン君に戦闘系のスキルを付けるぐらいの事は出来たんじゃ無いのか?」
「そりゃ、出来る事は出来るんだけど、
この間違いに気が付いたのが、女神フェルナ様に提出する為に作成していた
コイン君の死亡報告書を書いている時だったのよ、
その時点で、もうコイン君の魂は日本に行っちゃってたから呼び戻す訳にも行かなかったし、
さっきも言ったけど、同じ世界で魂を再利用すると問題が起こるかも知れないからね」
「なる程な、でも、僕がコイン君の代わりにコッチの世界で生活をして、
もし最後まで天寿を全うしたとしても、
王族に成れるという確率は大分低いんじゃ無いのか?」
「別に、最終職業が王族じゃ無くても良いのよ、
王位継承権が低い王子様なんかが、
自ら出奔して冒険者とかに成るなんて事は良くある事なんだから、
今回のコイン君みたいに、王族に生まれた筈の人が、
若くして村人として命を落としたなんて事になったら、
何か裏に壮大なドラマとかが展開していたんじゃ無いかって、
フェルナ様が調べるかも知れないでしょ?
もし、そうなったら私のミスが発覚して査定に響くかも知れないじゃないのよ、
そろそろ、新しいゲーム機が欲しくなったんで、
今、お小遣いを溜めてるところなんだから、
査定が下がって、お給料減額なんて事になったら堪ったもんじゃ無いわよ!」
「こっちが堪ったもんじゃ無いわ!」