オッサンに付いてても良いじゃないか!
「酒を飲むのが初めてってんなら、
最初は軽めの酒の方が良いだろうな・・・」
「はい、それで、お願いします村長さん」
「おう、分かったぜ、
お~い!誰かコインに軽めの酒を持って来てやってくれや!」
ディック村長が、銘々で飲酒や食事を楽しんでいる村人たちの方へ向かって、
そう、指示を出した。
「村長!それだったらウチで作ったマタタビ酒を持って来てあるから、
そいつで如何だ?」
村人たちの中から、誰かが、そう返事を返した。
「ああ、シロミミん処のマタタビ酒か、そいつぁ良いな、
持って来てやってくれるか?」
「おう!今持ってくわ」
その言葉と共に、大勢が座って居る村人の席の中から、
一人の中年程の年齢に見える男性が、
素焼きのツボを手に、コインらが座る上座の方へと歩いて来た。
「おう!シロミミの、ご苦労ご苦労、
コイン、この新しいコップをやるからよ、
こいつに、マタタビ酒を注いで貰えや」
「お客人、こいつぁウチで仕込んだマタタビ酒でさぁ、
強さが軽めだから飲み易いと思うぜ」
「は、はぁ・・・」
村長らに話し掛けられているにも関わらず、
生返事を返したコインは、心ここに在らずの状態で、
コップさえも受け取りもせずに、
マタタビ酒のツボを持って来た男性の頭へと注目していた。
「うん?どうしたんだコイン」
様子の、おかしいコインに村長が尋ねる
「村長、どうやら、お客人は、
俺の頭の上のコイツが気になってるみたいだな・・・」
「頭の上って、シロミミの耳がか?
獣人の耳だったら、コインのツレのポラリにだって、
しっかりと目立つのが付いてるじゃねぇか」
「多分、お客人には、俺みたいなネコミミに、
何か、特別な思い入れでもあるんじゃないか?」
「そうなのか?コイン」
「あ、ああ、すいません、
折角、話し掛けて頂いてるのに、生返事を返しちゃって、
僕が生まれ育った所には、獣人の方が一人も居らっしゃら無かったんで、
お会いしたのもチキチキ村でが初めてだったんですよ、
チキチキ村には、ネコタイプの獣人の方は居らっしゃらなかったので、
ネコミミが付いた獣人の方に、お会いしたのは貴方が初めてだったんで、
ビックリして、ガン見してしまったって次第です。
どうも、すいませんでした。」
コインが、ネコ獣人の男性の耳を見て驚いたのには、
勿論、それなりの理由があって、
地球に居た頃に、自宅で飼っていたエジプシャン・マウという種別の、
『トトメス』と名付けられたネコの耳と、
色合いがソックリであったからである、
種別的に、余り人に懐かない特徴があり、
実際、コインの両親や、お手伝いさんら家人には、
一切、自ずからは近付く事が無かったにも関わらず、
不思議と、コインが在宅中には、
片時も傍を離れない程に懐いていた事が思い出された。
(トトメス、相変わらず、あっちの僕と仲良くやってるかな・・・)




