福利厚生施設
『もう少しコインを、からかって遊ぼうかと思ってたんだが、
バレてしまったなら仕方が無い、如何にも私はパサラだ!』
「はいはい、しかしパサラさんだったのは良いとして、
普段は無口のパサラさんが、やたらと語りますね」
『うむ、普段の私は、口を利くのが面倒くさいから、
必要最低限の事しか口にしないが、
この黒魔法『死者の囁き』を使えば、
離れた場所に居る人にも、
話したい言葉を、頭の中に思い浮かべるだけで、
伝えたい人にだけ話し掛けられるから便利なのだ!
実際に今、私は隣の部屋からコインに話し掛けている』
「へ~、それは便利そうな魔法ですね、
僕にも憶える事が出来ますかね?」
『コインには、全属性魔法の適性があるから憶えられると思うけど、
離れた場所に居る人に話し掛けるには、『気配察知』のスキルが必要だから、
今のコインでは憶えても、目に見える範囲に居る人にしか話し掛けられない』
「そうなんですか、行く行くは僕も、
『気配察知』を覚えたいとは思ってるんですけど、
取り敢えず『死者の囁き』を覚えて置けば、
戦闘の時とかには役立ちそうですよね」
『ああ、敵に知られずに会話が交わせるから、
役には立つだろうな』
「そんじゃ、冒険者登録を済ませて落ち着いたら教えて下さいね、
それはそうと、何か僕達に用事があって話し掛けたんじゃ無いんですか?
まさか、イタズラする為だけに魔法を使った訳じゃ無いですよね?」
『ああ、イタズラは二の次で、
ホントの目的は、村長の使いが『歓迎会の準備が整った。』と伝えに来たから、
コイン達を起こして出掛ける為に使った魔法』
「そうなんですか、じゃあ服だけ着替えてから、
パサラさん達の部屋に伺いますけど、
パサラさん達は、直ぐにでも出掛けられますか?」
『私らの準備は出来てるから、直ぐにでも出られる』
「分かりました。
そんじゃ、僕も直ぐに着替えて伺いますね、
ファー、そういう訳なんで出掛ける準備をしてくれるか?」
『キュキュ~!』
旅の服装から、動き易い楽な服へと着替えたコインは、
首に巻き付いたファーを伴って、
隣の部屋に居たパサラとポラリに合流をして、
歓迎会が開かれると言う村の集会場へと向かった。
「へ~、ここが村の集会場ですか、
見た感じ、なかなか立派な建物ですね、
集会場ってのは、どこの村に行ってもあるんですかね?」
村長の家を出て、予めパサラらが場所を聞いていた
村の集会場へと向かうと、
そこには、日本で言うところのログハウス風の、
長く真っ直ぐに伸びた丸太を使った造りで、
50坪はあると思われる広いウッドデッキを備えた
総建坪300坪はあると思われる建物が聳え立っていた。
「んなわきゃねぇだろ!
集会場なんて立派なもん無い村の方が多いさ、
この集会場にしたって、この村の村長さんが金を出して建てたから、
これ程までに立派なもんが建ったんだろ」
「普通の村は、村長の家に集まる」
「ああ、そう言えば、
ハヤイ達の毛皮の売上金を、ゴハン代の他に、
村の事にも使ってるとか言ってましたね、
なる程、それで、こんなにも立派な集会場があるって訳ですね」