ディック村長の苦労話し
「村長さん、それで、そのイタチ君達は何処にいるんですか?」
コインが見た限り、駄々っ広い部屋の中には床に敷き詰められた敷き藁と、
奥の方に見える敷き藁用の藁らしき小山しか目に入らなかった。
「何言ってんだコイン、あそこに皆居るじゃねぇかよ」
ディック村長の指差す方向へと目を向けると、
どうやら奥の小山の方を指差している様であった。
「あの藁の山に潜り込んでるって事ですか?」
「藁の山?何言ってるんだ?コイン
お~い!お前達!
お前達に会いたいっていう、お客さんが来たから、
ちょっと挨拶をせいや!」
村長が部屋の奥に向かって大きな声を掛けると、
藁の小山と思っていた物から、
ニュニュニュ~と何本かの巨大な長い何かが持ち上がった。
「えっ!?あれって敷き藁用の予備の藁が、
積み上げて置いてあるんじゃ無いんですか?って皆デカっ!?」
「ホントに、とんでもないデカさのイタチ達だね、
あの一番大きな白いヤツなんて頭の先から尾っぽまで含めると、
5メートルはあるんじゃないのかい?」
「・・・すごく・・・大きいです・・・」
「ガハハハハッ!どうだ?
俺が手塩にかけて育てたイタチらは皆は立派なもんだろ~!」
「立派過ぎですよ!
村長さん、あれって絶対普通のイタチ達じゃ無いですよね?」
「ああ、自然界に、あんなにデカいイタチは居ないから、
間違い無く魔獣化したもんだろうね」
「空気中の魔素が薄い、この国で何故育つのかが不思議・・・」
「ああ、あいつらは確かに魔獣で間違い無いが、
俺が良く躾けてあるから人を襲う事は無いぞ、
それと、こいつらが、こんなに大きくなれたのは、
森に住んでた頃に、穴を掘って巣を作って暮らしてたんだが、
その巣の奥に、濃度の高い魔素を含んだ地下水の泉が湧いてて、
その水を飲みながら成長したからだろうな」
「へ~、魔獣は人を襲うもんだとばかり思ってたけど、
襲わない種類っていうのも居るのか」
「まあ、極稀にだけど居るな、
草食の魔獣でも人に襲い掛かるヤツが居るところから見ると、
個々の性格みたいなもんも影響してると思うぞ」
「食肉用に畜産している魔獣も居る」
「水は、その泉の水を与えるから良いとして、
エサは何を与えているんですか?」
「そうだな、魔素を含んだ水だけじゃ、
あんなに沢山、繁殖させる程のイタチ達を育てられる筈は無いからな、
何か、豊富な栄養と魔素を含んだエサが必要な筈だな・・・」
「魚系の魔獣みたいに水からの栄養は吸収出来ない筈」
「ああ、俺も最初は、
あの泉の水と、普通の肉なんかの食事を与えて居たんだが、
一向に増えてくれ無くてな、
そこで、知り合いの友人に魔法学園の教師をやってるヤツが居るってんで、
そのセンセイに聞いてもらったら、
高カロリーの栄養と、高濃度の魔素を含んだ食事を与えないと、
魔獣の繁殖は出来ねぇって事だったんだよ、
『そんなもん一介の村長に用意が出来る筈が無ぇ』って言ったら、
ルクシア共和国のピロンって街で、
マッドパイソンの畜産をしてる人を紹介してくれてな、
その人に会いに行ったら、同じく魔獣を育てる事を志す者として意気投合してな、
お蔭で格安で、コイツらの食料を譲って貰える事になったって訳さ」
「ピロンって、昼飯の時に食べさせて頂いた
あの『ピロン焼肉のタレ』のピロンですかね?」
「ああ、あの街は食用にマッドパイソンの畜産もしてるんだよ」
「あの街産の肉はサシが多くて美味しい」