ブラック村
「あっ、ブラック村らしいのが見えて来ましたよ」
「ああ、何とか暗くなる前に辿り着けたね」
「良かった。」
街道を進むコインら一行の目に、
形ばかりの木塀にグルリと囲われた村らしき物が見えて来た。
川原を後にした頃には、やや傾き始めていた太陽の陽射しも、
今は、地平線の彼方へと消え去ろうとしている
「前に立ち寄った村の村長さんが、
あの村の村長さんの知り合いって事で、
名前を出せば便宜を図ってくれるだろうとの事でしたんで、
村に着いたら、まず伺って見ても良いですか?」
「ああ、私らも、あの村は初めてだから助かるよ」
「よそ者を忌避する村は結構ある」
「今晩は~」
コインは、村の入り口らしき木塀の切れ目から中に入ると、
畑の横で農具らしき道具を片付けている男へと声を掛けた。
「はい、今晩は、
おや?旅のお方々ですかな?
その、お姿からすると冒険者の方々の様ですが、
この『ブラックの村』には、一夜の宿を求めてお立寄りになられたのですかな?」
「ええ、こちらのお二人は冒険者なんですけど、
僕は、まだ登録を済ませていないんで一般人ですね、
縁あって一緒に旅する事となりまして、
今、あなたが仰られた様に、
こちら村には一夜の宿を求めて立ち寄ったのですが、
実は、この村の村長さんに御用がありまして、
ご自宅の場所を、お伺いしようかと思いましてお声掛けさせて頂きました。」
「・・・・・。」
「ど、どうかしましたか?」
「あ、ああ、いや、すいません、ハハハッ
冒険者に成られる若い方にしては、
お言葉使いが、いやにご丁寧でしたのでビックリしてしまったんですよ」
「そうですか?僕の言葉使言って丁寧ですかね?」
「ああ、ちょっとバカ丁寧過ぎるぐらいだね、
こう言った場所なら構わないけど、
冒険者ギルドとかで、そんな話し方をしてると、
良いとこのお坊っちゃんと勘違いされて、
馬鹿な冒険者には絡まれるかも知れないね」
「TPOは大事」
「分かりました。
冒険者ギルドでは、気を付けて話しをする様にします。
それで、村長さんのお宅の方は教えて貰えますか?」
「ええ今、ご案内いたしますので、
この私に付いて来て下さい。」
「ありがとう御座います。
では、お願いします。」
「片付けの途中、すまないね」
「感謝する」
「村長!いるかい?」
案内の男は、村の一番奥の場所に建つ、
他の村の家々より少し大きめの家へとコインらを先導すると、
入り口の扉を勝手に開け、中へと声を掛けた。
「お~う!一人なら居るぞ!
今行くから、ちょっと待ってろや!」
家の奥からは、村長というよりかは、
盗賊の親分といった様なダミ声が返って来る
「村長は、今来るって言うから、
ここで待ってれば大丈夫だと思うんで、
私は、これで失礼しますね」
「ええ、ご案内を頂きまして、ありがとう御座います。
お手数をお掛けして、申し訳御座いませんでした。」
「ありがと助かったよ」
「後で何か礼をする」




