タイム・パラドックス
「さ~て、謎は全て解けた事だし、
パサラちゃんにも無事加護が与えられたから、
そろそろ、私も神空間に帰るとしようかしら」
女神ちゃん(小)の宣言と合わせるようにして、
カラスの様な鳴き声が『カァカァカァ』と聞こえる
「そう言えば大分、陽も傾いて来ましたね、
僕達も、そろそろ片付けをして帰る準備を始めた方が良いかも知れませんね」
「ああ、そうだね」
「カラスと一緒に帰りましょう。」
「あれ?パサラさん、日本の童謡なんて知ってるんですか?
ああ、もしかしてライ様から聞いた事があるんですね」
「違う、この歌は200年ぐらい前に勇者イチローから聞いた。」
「へ~、勇者イチローからですか・・・って、うん?
それって何か、おかしくないか?女神ちゃん(小)
いくら、この歌が学校唱歌になる程古いって言っても、
幾ら何でも江戸時代に出来たって事は無いだろ」
「ええ、そりゃそうよ、だって勇者イチローって、
コイン君の中の人が居た頃の日本と、
然程違わない年代から来ていた筈だもの・・・」
「えっ!?そうなのか?
だって、さっき女神ちゃん(小)は『古事記伝』や『東海道中膝栗毛』を、
出来て直ぐに読みに行ってたって言ってたじゃないかよ」
「チッチッチッ!端末だから女神パワーの一部しか使えないとは言え、
この世界を統べる女神フェルナ様の眷属たる、
この女神ちゃん(小)を舐めて貰っては困るわよ、
フェルナ様と、アマちゃんの関係で日本に限定されてはいるけど、
私だけなら、日本の好きな時代に自由に行けるのよ」
「へ~、そうなのか、
でも、それだったら200年前の時にも、
態々、パサラさんの事を後回しにしないで、
仕事が終わってから読みに行けば良かったんじゃ無いのか?」
「それは、仕方が無い事だったのよ、
何しろ私は、アニメだったら録画して後から見るよりも、
タイムリーに生で見なきゃ気が済まないタイプなものだから・・・」
「ふ~ん、まあ僕も本は発売日に読みたいタイプだったから、
その気持ちは、少し分からんでも無いけど、
そんじゃ、200年ぐらい前に、僕と然程違わない年代の日本に暮らして居た
勇者イチローが現われたって事は、こっちの世界と日本とでは、
時間の流れが違うって事なのかな?」
「う~ん、それとは、ちょっと違うのよね、
何と言って説明すれば良いのかしら・・・そうね、
説明の為に例えると、こっちの時間と、日本の時間は、
向かい合って波打ってるって感じなのよ、
それも、線の波グラフみたいのでは無くて、
波立つ海面が向い合せている様な感じね、
それで、お互いの波が重なり合った時に空間が繋がると考えるんだけど、
当然、こっちの波が大きくて、日本の波が小さい時とか、
また、その逆のパターンも然りだし、
お互いが同じ様な大きさで重なったりもする訳ね、
その小さい波が過去で、中波が現在、
そして、大きな波が未来って考えれば分かり易いかしら?」
「つまり、空間の波が重なり合ったタイミングによって、
お互いの時間がマチマチになるって事なのか?」
「まあ、大雑把に説明すれば、そんなところね」
「そんじゃ、もしかすると、
未来の日本から来たって人に会える可能性もある訳だ」
「ええ、私は、まだ聞いた事が無いけど、
無きにしも非ずなんじゃないかしら?」
「へ~、もし実在したら、
会って日本の未来の事とかを色々と聞いてみたいもんだな・・・」