大きい玄関の扉をくぐると、そこは〇〇であった・・・
歴史を感じさせる古めかしいデザインの重厚な玄関扉の、
ノブを掴みながらガチャッと閉め、
クルリと上がり框の方を振り返った溜太は思わず声を上げる
「えっ?何コレ」
溜太の視線の先には、いつもの大判のタイルが敷き詰められた内玄関の光景では無く、
暗く深い森が広がっていたのであった。
「ハッ!・・・やっぱりかよ」
溜太が勢いよく後ろを振り返ると、
今、自分が閉めた筈の玄関扉も消え去って、同じく暗い森が広がっていたのである
「こりゃ、やっぱりアレか?
ついに僕も、異世界の誰かに召喚をされて、
異世界デビューをしちゃいました~!ってパターンなのかな?
超能力者に、アマゾンの奥地に飛ばされたとかだけは勘弁して欲しいな」
「ピンポン!ピンポ~ン!大正解です!
あなたが今、立ってるのは異世界で間違いありませんよ!」
「うわっ!?ビックリした~」
突然、耳元で声を掛けられた溜太は驚いてスザッと飛び退いた。
「驚かせてしまった様ですね、申し訳御座いませんでした。」
声のする方へと溜太が目を向けると、
そこには、神々しいまでの美貌を誇り、
光り輝く長い金色の髪と、緑の瞳が特徴的な身長30センチ程の人物が、
その身を、古代ギリシャ人が着ていた様な白い布の服を身に巻き付けて、
フワフワと宙に浮かんでいたのであった。
「あなたは?」
(何か見た目は、女神のフィギュアって感じだな・・・)
「ピンポ~ン!今、あなたが頭の中で考えた女神というのは、半分正解みたいなものですね」
「うおっ!?僕の頭の中が読めるんですか!?
ってか、半分正解っていうのは、どういう意味なんでしょうか?」
「今現在、あなたが居る、この世界は『女神フェルナ』様が治める、
『シエラザード』という世界なのですが、
如何にフェルナ様が有能だとて同時に世界中を見渡せる訳では御座いません、
そこで、地域ごとに私の様な端末が管理をして、
自分の受け持ち地域内で何らかの問題が持ち上がった時に、
フェルナ様に御報告を上げるという訳です。
そうですね・・・私の事は女神ちゃん(小)とでも呼んで下さいね」
「なる程、そうすると僕をシエラザードに召喚したのは、
そのフェルナ様って事で良いのかな?」
「ブブ~ッ!それはハズレで~す!
あなたをコチラの世界に連れて来たのは、フェルナ様では無くて、
私こと女神ちゃん(小)の仕業なのでありました!」
「えっ!?それって、フェルナ様の端末の女神ちゃん(小)でも、
人間を異世界に渡らせる程の力があるって事?」
「ブブ~ッ!それもハズレです。
流石に大変優秀な女神ちゃん(小)でも、人一人を異世界に送るまでの力は御座いません。」
「えっ?でも実際に、こうして・・・」
「その御説明をしますので、
まず、今現在の御自分の服装の御確認からお願いします。」
「服装って・・・アレ?」
女神ちゃん(小)に言われて気付くと、
溜太は自分が、学校の制服であるブレザーでは無くRPGの村人Aの様な服を着て、
自らの背に、背負っていた筈のリュックが無くなっていた。
「次に、これを覗いて見て下さい。」
女神ちゃん(小)は、空中にポン!と手鏡の様な物を出現させると、
それを、溜太へと手渡した。
「これって手鏡なのか?・・・いや、違うか、
何か金髪・碧眼の、かなりの二枚目が映ってて、
なかなかにムカつくんだが、これは魔導具か何かなのか?
それと、彼と僕の関係は何なのかな?」
「いえ、それは唯の手鏡ですよ、
そこに映り込んでいるのは、紛れも無く今の貴方自身の顔です。」
「えっ!?この二枚目が今の僕の顔だって!?」