先付け派・後付け派
「そんじゃ、コイン君が解体を手伝ってくれたお蔭で、
お肉も早く捌けた事だし、さっさと焼いて昼食としましょうか」
「私はタレの付け焼きが良い」
ポラリらが狩って来た獲物を解体して、
毛皮と、食用では無い素材を魔導リュックに収納してから、
食肉やモツを、食べ易い大きさへとカットし終えたので、
漸く昼食の時間との運びになった。
「僕の魔導リュックにパンが入ってるんですけど、
御二人とも召し上がりますか?」
「ああ、私は貰らおうかな、
パサラは如何する?」
「私はオニギリを食べる」
「えっ!?オニギリって事は、お米があるんですか?」
「ああ、ザドス王国の『ハバラの街』って所が大稲作地帯でね、
そこから世界中へと輸出されてるんだよ」
「『ドボルニシキ』が美味しい」
「あの~、宜しかったら僕にも御握りを分けて頂けますでしょうか?」
「ああ、オニギリだったら魔導リュックの中に、
沢山入ってるから全然構わないけど、
何、コイン君はゴハン派なのかい?」
「私は、断然ゴハン派」
「え、ええ、パンより御飯の方が好きなんですけど、
この世界には、パンしか無いと思い込んでたんで諦めてたんですよ」
「今の言い方だと、まるでコイン君は他の世界から来た人みたいな言い方だね」
「同感」
「い、いえ!言い間違いました!
この『世界』では無くて、この『国』です国!」
「ふ~ん、まあ良いや、
はい、コイン君が御所望のオニギリだよ」
ポラリが、自分の魔導リュックから、
大きな笹っポイ葉に3個包まれたオニギリを取り出すと、
コインへと手渡した。
「ありがとう御座います。御馳走になります。
僕のパンもご自由にお取りくださいね」
コインは、ポラリから御握りの包みを受け取るとテーブルの上へと置き、
自らも、魔導リュックから幾つかのパンが乗ったカゴを取り出すと、
テーブルの上へと乗せた。
「そんじゃ、肉の方を焼き始めるかね、
そうだ、コイン君は野菜は火を通さないと食べられないタイプの人かい?」
「タマネギとカボチャは焼いた方が甘い」
「いえ、生野菜も普通に食べられますよ」
「じゃ、野菜の方は生野菜サラダで良いか」
「私はマヨを所望する」
「え?パサラさん、マヨってマヨネーズの事ですか?」
「そう、私は、ちょっぴり辛いカラシ・マヨが好き」
「へ~、マヨネーズも、ちゃんとあるんですね、
マヨネーズがあるなら生野菜も食べ易いですね」
「コイン君、今の君の言い方だと、
マヨネーズの存在自体は知ってるけど、
この世界には無いと考えてたように聞こえるね」
「確かに」
「い、いえ!これも、この『国』には無いと思ってたんで出た言葉です。」
「ふ~ん、そうなんだ・・・まあ、良いや、
肉はタレを付けてから焼くかい?
それとも、焼いてからタレを付けて食べる様にする?」
「甘口、辛口とある」
「あ、辛口を、焼いてから付けて頂きます。」
「そんじゃ、私もコイン君と同じく、焼いてから付ける派だから、
付け焼きはパサラの分だけで良いね」
「あの、少し焦げた苦みの味わいを理解出来ないとは・・・」
「はい、僕も肉を焼くのも手伝います。」