ヨモギ
「コイン君、川原だから延焼なんかの心配は無いと思うんだけど、
試し撃ちに、もし火魔法を使う気なんだったら一応気を付けなよ」
「火の用心」
自分の魔法の威力を、ポラリとパサラに実際に使用して見せると言うコインに、
2人が注意の言葉を掛ける
「いえいえ、延焼の心配なんか必要無いですね、
僕の火魔法で火災が発生するとしたら、
もっと空気がカラッカラに乾燥していて、
落ち葉でも降り積もった所に撃ったら起きるかも知れませんが・・・
では今、話題に上がった火魔法を撃ってみますね・・・『ファイアボール!』」
コインが呪文を唱えると、足元の川原の石畳の上に、
直径1センチにも満たない火の玉がコロコロと転がった。
「「・・・・・。」」
「ご感想は?」
「今のがホントに、コイン君の『ファイアボール』なのか?」
「オキュウの火種に良さそう」
「はい、正真正銘の『ファイアボール』ですね・・・ってかパサラさん、
御灸って、こっちにもあるんですか?」
「オキュウを知ってるのかい?コイン君、
パサラの兄上のライ様が、ヨモギとかいうハーブを何処からか探して来て、
疲労や筋肉痛に効くって、最近ウチの国で流行り始めたばかりなんだけど・・・」
「私はクサモチにした方が好き」
「え、ええ、僕が知ってる御灸と同じものかは分かりませんが、
僕の国にも、蓬の葉を加工して火を点ける療法があったんですよ」
「へ~、ライ様が考え出したオリジナルの治療法かと思ったら、
他の国にも、同じ療法があったんだね・・・」
「・・・・・。」
「そ、それで、僕の魔法は如何でしたか?」
「まだ、火魔法しか見てないけど、
他の魔法も今と同じレベルだったら、確かに使い道に困るよね」
「スキルの後に(超低級)と付いてるなら、
他の魔法も、似たり寄ったりの威力の筈」
「そうなんですよね、他の魔法の威力も似たり寄ったりなんですよ、
ただ、一つだけ希望が持てるとしたら、
僕、ユニークスキルを2つ持ってるんで、
その、どちらかが魔法に関連してるとすれば何とかなるのかな?とは思うんですよ」
「ユニークを2つも持ってるだって!?そりゃ凄いね、
ただ、さっきも言ったと思うけど、自分のスキルの事は余り他人に話すんじゃ無いよ」
「他言無用」
「はい、僕も人を見て話す様に気を付けます。
ポラリさん達は、2人でもA級に成れる様な実力者の方々ですから、
話した所で、別に僕の力なんて必要とされ無いだろうと判断して、
お話をしました。」
「ああ、そんな風に話す相手は十分に考えるんだよ、
敵に自分のスキルを知られると、思わぬ落とし穴になる事だってあるからね」
「注意一秒、怪我一生」
「まあ、このユニークスキルにしたって、
冒険者ギルドで登録する時に鑑定して貰わないと、
どんな能力があるかって分からないんですけどね」
「まだ鑑定して貰って無いのかい?
そんじゃ、パサラが鑑定スキル持ちだから見て貰ったら良いんじゃない?
ギルドで鑑定して貰うと料金が掛かるし、
さっきも言ったけど、コイン君がどんなユニークを持ってた所で、
私らは2人でも十分に、やって行けるから無理な勧誘とかも必要無いしね」
「特別無料サービス」
「えっ!?パサラさん鑑定スキルをお持ちなんですか?
それなら、僕も早く自分のユニークの内容を知りたいんで、
是非にでも、お願いしたいです!」