ニューエイジ
「「「ケ~ン!ケンケ~ン!」」」
街の門から出て来た小鹿たちを発見した
ナンカイイカン鹿?の親鹿たちが一斉に大きな鳴き声を上げた。
「「「ピヤァ~ピヤァ~!」」」
それに呼応する様に小鹿らが鳴き声を上げると
お互いへと向けて両者が駆け始めた。
「「「ケ~ン!ケ~ン!」」」
「「「ピャ~ピャ~」」」
親鹿や小鹿たちは、其々の親や子へと駆け寄ると
鼻先を擦り合わせたり、体に頭をグリグリと押し付けながら
再開の喜びを表現していた。
「ケ~ン!」
鹿たちが、一頻り久々の親子のコミニュケーションを交わすと
他の親鹿らより、やや体が大きく見える群れのリーダーらしき鹿が、
皆へと向かい『山奥へ帰ろう』とでも言う様に、
麓に深き森が広がる山の方を見ながら鳴き声を上げる
「ピヤッ?ピャ~ピャピャ~」
それに対し、リーダー鹿の子供と見られる
近くで寄り添っていた小鹿が何事かを伝える様な鳴き声を返した。
「ケン?ケンケ~ン?」
「ピャッ!」
「なぁ、ファー
鹿の親子たちは何を話し合ってるんだ?」
その様子を、パーティーの仲間や、街の代表者たち、
そして、小鹿らをテームしていたジョゼッペと共に見守って居たコインが
自らの胸元に張り付いているファーに尋ねる
「キュッ、キュキュウキュ~・・・」
「えっ!?マジでか?」
「ファーは何て言ってんだい?コイン」
「興味あり」
「何か親子で揉めてるって感じっすよね?」
コインとファーが何かしらの会話を交わしているのを見た
ポラリ、パサラ、サナエの3者らが声を掛ける
「ええ、それなんですけどね、皆さん
何か、ファーが言うには、
小鹿たちが、外敵に怯えながら山奥で暮らすよりも、
安全で、食べ物も十分に与えてくれる、
この街で暮らした方が幸せなんじゃ無いかって、
親鹿たちに訴えているそうなんですよ」
「なる程ね・・・確かに、小鹿たちからしたら、
今までの山奥で隠れ過ごして来た環境と比べたら、
高い防護壁に守られた広々とした飼育場所で
餌を十分に貰いながら安心して暮らせる生活ってのは魅力的だろうね・・・」
「納得」
「今まで、山奥で隠れ暮らして来たナンカイイカン鹿たちにも
新しい考え方をする若者たちが現れて来たって感じっすかね・・・」
「ケン?ケンケンケ~ン?」
「「「ピャ~ピャ~」」」
「ケンケ~ン?」
「「「ケ~ン・・・ケンケ~ン」」」
「ケ~ン・・・ケン!ケンケ~ン!」
小鹿たちや、他の親鹿らから意見らしきものを聞き募っている様子だった
リーダー鹿が一頻り思案する様な様子を見せると、
やがて、決心でもしたかの様な鳴き声を一声上げてから、
ファーを抱えるコインの方へと向けて歩いてきた。
「ケン、ケンケ~ン」
「キュキュッ?」
「ケンケ~ン」
「キュッ!
キュキュ~キュキュキュキュキュ~」
リーダー鹿と、何らかの会話を交わしたファーは、
次いで、自らを抱えているコインへと向かい声を掛けた。
「ああ、分かったよ、ファー
それじゃ、僕の方から聞いてみてみるね」
ファーから話し掛けられたコインが、そう返事を返す
「それで、ファーは何だって?コイン」
「妥協案可決成立?」
「あの鹿たちの感じからすると、
親鹿たちの方が折れたって感じっすかねぇ~?」
「ええ今、サナエさんが仰られた様に、
ナンカイイカン鹿たちは、
この街に対して集団での保護を申し出て居るんですよ・・・」




