温度差
「そんじゃ、取り敢えずはナンカイイカン鹿?の小鹿たちを、
親鹿たちに逢わせる所から始めるから、
爺さん、小鹿たちを先導して街の外まで誘導してくれるかい?」
事態の解決方針が決まったので、ポラリが指示を出す。
「うむ、構わんぞ、
小鹿のみっなさ~ん♪お出かけするから集まってくれるかな~?」
ポラリの指示を受けたジョゼッペが、
今までの渋い声音から一変して、
高音のオネェさんの様な裏声を出しながら小鹿たちに語り掛けた。
「うわ~、何か精神的なダメージが乗ってるみたいな声だな」
「同感」
「キグルミを着込んだお爺さんがアノ声で話をしているのは、
確かにキツイものがありますね」
「伝説の裏に隠された真実を垣間見た気分っすね」
コイン達の感想とは裏腹に、ジョゼッペの声を聞いた小鹿らが
ワラワラと近くに集まって来た。
「そんじゃ、私達がガードしながら街の中を移動するから、
街の代表のアンタ達は先触れで、街の連中に声を掛けといてくれるかい?」
「はい、分かりました。」
「僕たちが先行して、街の連中に声を掛けて置きましょう。」
「小鹿らの移動の間は、不要な外出は避ける様に声を掛けて置きますね」
「小鹿たちをビックリさせるとジョゼッペ爺さんのスキルが
解けるかも知れないからね」
「では、私は街の警備兵らに申し伝えて置きますね」
ポラリの指示を受けた街の代表者らと、
警備責任者であるデスヨネーが其々の役割を果たす為にと
街中へと散って行く
「良し!そんじゃ、私とパサラで群れの先頭に位置するから、
コインとサナエは後方で警戒に当たってくれるかい」
「はい、分かりました。」
「了解っす!姉さん」
ポラリが告げた様に、先ず先頭にポラリとパサラ、
次いで小鹿らの群れを先導するジョゼッペが続くと、
後方からコインとサナエが周囲に気を配りながら続いた。
街の入出門へと続くメインストリートは、
代表らの先触れがキッチリと働いている様子で、
警備兵らが疎らに展開しているのみで、
住民たちは建物の中から窓を通して外の様子を静かに伺っていた。
「門を開けてくれるかい?」
何の問題も無く、街の外壁に有る門へと着くと、
門の前で待機していた警備兵と責任者であるデスヨネーに対して
ポラリが、そう声を掛ける
「はい、畏まりました。
おい!閂を外せ!」
「「「「ハッ!」」」」
デスヨネーの指示を受けた警備兵たちが門に通された巨大な閂を外すと、
ギギ~という木が軋む音と共に門が開かれた。
「そんじゃ、街から出るよ?爺さん」
「うむ、了解じゃ、
それじゃ、みんな!でっかけ~るよ~♪」
「前半のセリフと、後半のセリフの温度差がハンパないっすね」
「ええ、普段の声が低音で渋いだけに、
スキルを使う時の裏声の高音に感じる違和感が倍増しますよね」
街中を移動した際と同じく、ポラリらを先頭とした行列が門を潜って
ファーと親鹿らが待ち受けている、街の外へと出て行った。
『キュキュキュ~ッ!』
コインらの帰りを待ち侘びて居たのか、
街の外壁から少し離れた場所にて、親鹿たちと待機をしていたファーが
スタタタタ~と走りよると、
ピョ~ンと飛び跳ねてコインの腕へと納まった。
待機中に親鹿たちの信頼を得たのか、ファーの体の大きさが、
コインらが別れた時の大型サイズから、小型のサイズへと戻っていた。
「おお、大分待たせて仕舞って悪かったね、ファー
でも、ちゃんと小鹿たちは連れて戻ったから安心してね」




