栄誉の血脈
「建物自体は、他の街の役所の建物と変わらないけど、
あの、正面の壁に掲げられてる大きな看板の所為で、
外観が台無しになってるって感じだね」
「同感」
「えらく自己主張が激しい看板っすよね」
「ええ、せっかく石造りの重厚で立派な建物なのに、
あの、壁に掲げてある『Y.H.S.Bハウス』って書かれた
極彩色の派手な看板が台無しにしていますね」
ハンサム・シティーの大通りを進み、街の一番奥に位置する、
行政を司るという建物に着いたコインら一行は、
その建物の外観を目にして、其々が感想を述べる
「ああ、あのド派手な看板ですか・・・確かに、
この街の住人にも不評なんですよね、
でも、この街の最高責任者である方々が決めた事なので
私を含めた住人一同も、『仕方が無いか・・・』と
皆、諦めているんですよ」
コイン達の言葉を聞いたデスヨネーが、そう告げた。
「へ~、その連中ってのは、
この街で、そんなに権力があるのかい?」
デスヨネーの発言を聞いた
ポラリが、そう尋ねる
「はい、皆様方とも、
この街を興された方々の御子孫で在らせられますから、
この街での発言力は可也のものとなりますね」
「なる程ね、この国は貴族制じゃ無いから、
街の創始者の子孫連中ともなれば、
生まれながらに、かなりの優遇措置ってやつが
与えられてるんだろうね」
「善きに計らえ」
「うわ~、金持ちの坊ちゃん連中みたいのが
出て来なきゃ良いっすね~」
「サナエさん、そう言う発言って
フラグになるから止めといた方が良いですよ・・・」
「それでは、街の代表の方々が居られる御部屋へと
御案内を致しますから、
私について来て頂けますか?」
建物内へと入り、
入り口の正面にあった受付カウンターらしき場所で、
面会の手続きを済ませたデスヨネーが尋ねる
「ああ、案内頼むよ」
一行はポラリの発言を合図に、
デスヨネーについて歩き始めた。
「皆様、こちらの御部屋となります。
只今、皆様の御入室の許可をお取りして参りますので、
少々、こちらで御待ち下さいませ。」
デスヨネーの案内で、魔導式と思われる昇降機に乗り込み
最上階の3階で降りた一行は、
長い廊下を進んだ先にあった一際豪華な扉の前で、
そう告げられた。
「ああ、分かったよ」
「3秒だけ待つ」
「お偉いさんに会うのって、
色々と手続きが面倒くさいっすよね」
「まあ、防犯の面を鑑みると
簡単に会えると困るっていうのも有るんでしょうね」
「皆様、御入室の許可が下りましたので、
どうぞ、お入り下さいませ。」
幸いにして、然程待つ事も無く、
部屋の中から戻って来たデスヨネーが告げる
「ああ、みんな行くよ」
「36秒掛かった。」
「了解っす。」
「はい、お邪魔します。」
一行は、デスヨネーの案内で、
ハンサム・シティーの代表者らが居るという部屋へと、
足を踏み入れた。




