長い物には巻かれよ
「ああ、ファーに危険が無いなら
別に構わないんじゃ無いかね、
大人しいと言っても魔獣は魔獣だからね、
あれだけの数に一斉に掛かって来られたら
私らでも、死ぬ事は無くても、
ちょっとした怪我位は負うかも知れないからね、
安全に問題が解決できるなら、それに越した事は無いだろ」
「同感」
「姉さんらは兎も角として、
アタイとコインは、あの角が付いた頭で頭突きとかされたら
骨折ぐらいは負うかも知れないっすからね」
コインから、ファーがナンカイイカン鹿?達と
コミニュケーションを図っても良いかと
尋ねられた他の面々が、そう返答を返した。
「はい、分かりました。ありがとう御座います。
そんじゃファー、ポラリさん達の許可は貰えたんで、
意志の疎通が出来るか行って来てみてくれるか?
危なそうな感じだったら、直ぐに戻って来るんだぞ?
後、下手に鹿達を警戒させたくは無いんだけど、
その体の大きさだと見縊られるかも知れないから、
相手の対応次第では、
元の体の大きさに戻った方が良いかも知れないからな」
『キュキュッ!』
ファーは、コインの注意事項等を黙って聞くと、
分かったという感じで鳴き声を上げながら
右前脚をスタッと上げると、
ハンサム・シティーの防護壁の周辺で屯している
ナンカイイカン鹿らの群れへと向かって、
スルスルと走り始めた。
『キュキュ~!』
『『『『『ケ~ン?・・・ケンケ~ン・・・』』』』』
ナンカイイカン鹿らの群れへと近づいたファーが
鹿らに向かって声を掛けて見ると、
一瞬、『何だ?』って感じで皆が振り向いたものの、
直ぐに『何だ、タダの屍か』とでも言う感じに、
興味を無くして街の防護壁の方へと向き直ってしまった。
『キュッ?・・・キュッキュッ、
キュ~キュ~キュキュ~!』
自分の言葉を聞いて貰えないと気付いたファーは、
コインの先程の言葉を思い出し、
自らの特殊スキルで小型化してある体を解除して
元々の体の大きさへと巨大化した。
「おっ、ファーが小型化を解除して
元の体の大きさへと戻ったみたいだね、
何か、久々にファーの本来の姿を見たけど、
村に居た頃よりも大きくなってる気がしないかい?」
「当社比8分の5倍」
「従魔は、主が魔獣を倒すと、
幾らか経験値の分け前が入るっすからね、
旅の途中で、ちょくちょくコインが倒した
魔獣の経験値の分が入って、
村に居た頃よりレベルが上がってるんっすね」
「おお!村に居た頃より、多分、
1メートルぐらいは大きくなってそうですよね、
村に居た頃は3メートルぐらいに見えたけど、
今は、4メートルはあると思います。」
『キュキュキュ~!』
『『『『『ケ~ン・・・・・ビィ~ビィ~ビィ~!?』』』』』
巨大化したファーが再び声を掛けると、
『何だよ、マダ何か用があるのかよ』という感じで
後ろを振り向いた鹿達が、ファーの巨体を見て一瞬固まり、
今度は、警戒をするかの様な鳴き声を一斉に上げ始めた。
『キュキュッ!』
『『『『『ビィッ・・・・・・・・・』』』』』
ファーが、『静かにしろ』とでも伝えたのか、
警戒の鳴き声を上げていた鹿らが急に鳴き止み、
ファーの出方を伺う様な素振りを見せながら、
オドオドとした視線を送って来た。




