薄利多売
「これは、絶対にヒットしますよ!!
久々の大商いとなる予感が致します!!」
コイン発案の、バネ紐の商品化の目途が立ったので、
特許登録やアイデア料等の打ち合わせの為に
研究所へと呼び出された
商業ギルドの職員である『アコギー』が
興奮した様子で皆に、そう告げる
「うむ、ワシも結構な需要となるであろうと
予測しとるんじゃよ」
「特定の年齢層とか、性別に限定しないで
需要が得られそうなのは良いですよね」
「コイン君のお蔭で、このバネ紐と一緒に、
ウチの研究所の名前がマタ売れそうですね」
アコギーの言葉を受けて
研究所の面々も、各々そう発言を述べる
「ああ、私らも試しに部屋着のウエストに
バネ紐を入れてみたけど、
コリャ確かに楽で良いね」
「コイン、褒めて遣わす」
「派手に動くとズリ落ちそうっすから
アタイらの仕事着には今一っすけど、
それ程、動き回らなくて良い仕事の人とか
部屋着で使う分には最高っすよね」
「お役に立ちそうで良かったです。」
博士らに続き、コイン達も発言をする
「しかし、コイン様
今回のバネ紐のアイデア料の方なのですが、
本当に、この程度で宜しいのでしょうか?」
アコギーが心配そうな表情を浮かべながら
コインに、そう尋ねる、
と言うのも、通常、商業ギルドへと特許登録された
アイデアを利用して商品を売り出す場合、
アイデア料として、売上金の内、
最大3割が発案者へと支払われるのであるが、
コインは、1割で良いと告げたのであった。
「ええ、僕のアイデア料が1割に抑えられれば、
その分、販売する値段なんかも抑えられますよね?
僕的には、多くの人が便利に使ってくれた方が嬉しいので、
その設定で十分ですよ」
「ほう・・・コイン様は、まだお若いにも関わらず
他には類を見掛けぬ様な、素晴らしき奉仕精神の持ち主で
居られますなぁ・・・・分かりました!
このアイデアを利用した商品を発売する際には、
我が商業ギルドが受け取る手数料の方も、
最低の設定金額とする事を、お約束申し上げましょう!」
「ありがとう御座います。
宜しくお願いします。」
アコギーは数々に渡る必要書類を作成すると、
博士らや、コイン達に礼を告げながら帰って行った。
「でも、博士
何度もお聞きして申し訳無いんですけど、
本当に、今回のバネ紐のアイデア料を
僕だけが貰っちゃっても良かったんですか?
実験費とか、開発費とかの経費が、
結構、掛かったんじゃ無いかと思うんですけど・・・」
アコギーが去った後、
コインが、博士に向かい尋ねる
「うむ、構わん構わん
ウチの研究所は、ワシが開発した数々の発明にて
十分に潤っとるし、実験開発費と言っても、
元々、ウチの研究所にあった安価な素材と、
器具を利用して簡単に行えたものだしな、
ウチ的には、あの、
バネ紐を利用した商品が広く出回り、
それに依って、ウチの研究所の名が売れるだけでも
十分に元が取れるんじゃよ・・・」
「そうなんですか・・・分かりました!
今回は有り難く、博士の御好意に甘えたいと思います。」




