バネ~ル君
「さて、これでコイン君が発案した
スプリング・スライムの素材を、
薄く紐状に加工した物の実用性が出て来た訳じゃが、
商品化するに当たり、何か良い呼び名が無いかのう?
人に拠っては、魔獣の素材を嫌う者も居るでなぁ
なるべくなら、
素材を連想させぬ呼び名が良いのじゃが・・・」
「そういうのってのは、
商業ギルドとか、品物を販売する商会なんかで、
考えるものなんじゃ無いのかい?」
「同感」
「アタイも、そういうもんだって思ってたっす。」
「そうですよね、結構、商品名が当たって
ヒットしたなんて話を聞いたりしますもんね」
「うむ、そういう場合も多いんじゃが、
ワシの場合は、店で見掛けた際に、
直ぐにワシの研究所で開発された品だと分かる様に、
商品名とセットでギルドなどに提供して居るんじゃよ」
「なる程ね、確かに、他人が付けた名前じゃ、
シックリ来なくて憶え難いかも知れないからね」
「一理ある」
「そうっすね、自分で付けた方が
愛着も湧きそうっすもんね」
「ええ、そう言われれば、
そうかも知れないですね」
「どうじゃ?コイン君
この商品の発案者特権として、
何か良い呼び名を付けてみんかね?」
「えっ?ホントに僕が付けて良いんですか?」
「うむ、長きに渡り多くの研究者たちが、
スプリング・スライムの素材を使った品を、
太く厚くする研究を続けて来た中で、
逆に、細く薄くする事に依って、
新たな使い道の幅を広げた功績は大きいからのう
コイン君には、十分に名を付ける資格があると
考えられるぞい。」
「はい、分かりました。
僕としては、似た様な品物を知っていたから
この加工を思い付いただけなので、
発案者面をするのは非常に心苦しいのですが、
折角の機会なんで、名前を付けさせて貰いますね、
う~ん・・・日本のゴム紐に似た品物で、
スプリング・スライムの素材を使った品か・・・
そんでもって、直接的に魔獣を連想させない
名前が良いんだよな・・・そうだ!博士
『バネ紐』って名前は如何でしょうか?」
「バネ紐?紐は分かるんじゃが、
その『バネ』というのは如何いった意味があるのじゃね?」
「バネっていうのは、僕が知ってる地方で使われている言葉で
スプリングを指す言葉なんですよ」
「なる程のう、確かに、
それならば、魔獣を連想する事が無いと思われるのう
分かったぞい、コイン君
この品物を商業ギルドなどに提供する際には、
『バネ紐』の名で販売して貰う事とするぞい。」
「はい、ありがとう御座います。博士」
「そういえば、以前に聞いた話で、
どこぞの鍛冶屋が、馬車の振動を軽減させる部品として
『重ね板バネ』なる技術を開発したと聞いた事を
思い出したんじゃが、
今回の、コイン君が考え出した名と、
何かしらの関係でも有るのかのう?」
「えっ!?重ね板バネが有るんですか!?」
「ソレだったら、この前乗った
魔導自動車とかにも使われてる筈だよ」
「常識」
「へ~、そうなんっすね」
「知らなかった・・・僕は、てっきり、
何かしらの魔獣の素材を利用して、良い感じに
振動を吸収しているのかと思っていましたよ、
博士が仰った『重ね板バネ』も、
僕が知ってる同じ地方の言葉なんで、
開発に当たった人達の中に、
その地方の人が係わっているのかも知れませんね」




