飛行船
「して、そのコイン君が知ると言う
空気よりも軽い気体を利用する空飛ぶ船とは、
正式には、何と呼ばれて居ったんじゃ?」
「確か、『飛行船』と記載されていたと思います。」
「おおっ!大空行く船に、
まさに、相応しいと言える名称じゃな、
して、どんな形状をして居ったかなどは、
分かるのかのう?」
「はい、挿絵があったので分かりますね、
何か、メモ帳みたいな物ってありますか?」
「うむ、シーサンよ、
何か書ける物を持って来て、コイン君へと渡すのじゃ」
博士が、傍らでビーサンと共に、
博士とコインの会話へと耳を傾けていた
助手のシーサンへと指示を出した。
「はい、分かりました。博士
・・・・・これで、良いかな?コイン君」
シーサンは、博士の指示に従って、
研究室に置かれている自分の机へと向かうと、
少し灰色掛かったワラ半紙の様な紙の束と、
インクが内蔵されていると見られる、
万年筆の様な形状をしたペンを持って来て、
コインへと差し出した。
「ええ、ありがとう御座います。シーサンさん
この、筆記具って、
もしかして、インクがペンの中に、
いくらか内蔵されているんですか?」
コインは、自分の記憶の中にある
地球の万年筆を思い浮かべながら、
シーサンへと、そう尋ねる
「ああ、良く知ってるね、コイン君
このペンは、コウガ王国で最近開発されて、
この国の首都にある商会でも、
最新式のペンなんだよ」
「そ、そうなんですか、
前に読んだ勇者様関連の本で、
似た様なペンの事が書いてあったんで、
そうじゃないかな~・・・と思ったんですよ、
そ、それじゃ、飛行船の形状を簡単に書いてみますので、
皆さん、ご覧になって下さいね」
最近発売された最新式のペンと聞き、
何かしら、自分の素性が詮索されるかもという
危惧を抱いたコインは、
博士らの目を逸らす為に、
手早く飛行船の簡単なスケッチをサラサラと描いた。
「ふむ、なる程のう・・・この上の大きな楕円の部分に、
空気よりも軽い気体を詰め込んで密閉をし、
下の部分に吊り下げられた船を浮かせるという訳じゃな」
「この、後ろに付いた円形に組み合わされた羽根にて、
進行方向を調節するのですかね?」
「何か、コウガ王国から輸入された
風を送る魔導具の『センプウキ』とかいうのに、
チョ~形が似てないですか?」
「えっ!?扇風機って、もう、
コッチでも、あるんですか?シーサンさん」
「ええ、一昨々年ぐらいから、
この国にも輸入される様になりましたね、
今の言い方からすると、
コイン君は、コウガ王国の出身なんですか?」
「い、いえ!僕は決して、
コウガ王国の出身っていう訳では無いんですけど、
前に、そんな魔導具があるって事を、
どこかで耳に挟んだ事があったんですよ・・・
そ、そうだ!シーサンさんの目の付け所は良いですよ!
この絵の船の、後ろの部分に付いているのは、
強度的には、ずっと強化されているものの、
扇風機と原理は同じ物ですね、
扇風機の場合は、本体が固定されているから、
風の方が送り出されますけど、
空中に浮かんでいる飛行船に取り付けると、
本体が付いた船が軽いので、
風を送り出す力で、船の方が進むって寸法ですね」




