ピカピカまん丸
「よっ!・・・と」
コインは、自らに飛び掛って来た草原狼を、
僅かに体を捻る事によって躱しながら、
同時に、右手に持った剣で、その首を切り落とす
草原狼は、自らの首が落とされた事を気付かぬ様に着地し、
そのまま数歩を歩いた後にドサリと横倒しになった。
「ふぅ・・・これで、ソウロウを3頭に、ツノウサが5匹か、
今日の所の狩りは、こんなもんでオッケーかな・・・
しかし、こいつらも野生で生きてるんだから、
自分達より、僕の方が強いって本能的に分かるだろうに、
何で飛び掛って来るんだろうな?
普通の動物だったら逃げるだろうから、魔獣独特の習性って事なんだろうな・・・」
コインは、他の獲物と同様に草原狼の死体を魔導リュックから取り出した
大きな葉で血が垂れない様に包むと、再び魔導リュックへと収納した。
コインが、チキチキ村で臨時の狩人として働き始めてから1週間程が経過し、
本来の人当たりの良さから、村の子供たちも良く懐いている事も手伝い、
村でのコインの評判は上々であった。
その人気振りは、息子のシュピシュピの到着を待つ、元の狩人ピュンピュンが、
『シュピシュピが来ても、もう要らないと言われるのでは・・・』と心配する程であった。
「お帰りコイン兄ィ、今日も獲物いっぱい獲れたんか?」
「こんやも、オニクが食べられるのかな?」
「コインお兄ちゃんが狩りにシッパイするはずないよ」
いつもの様に村へと帰り、定位置となっている井戸近くの木の枝に、
今日の獲物をぶら下げ解体作業をしているコインのところへと、
これまた、いつもの様に村の子供らが集まって来た。
「よう!ただ今、みんな、
今日の獲物はツノウサが5匹に、ソウロウが3頭だな、
昨日狩って来たロッポンの肉も、まだ余ってるって村長さんが言ってたから、
今日も、皆の家で食べる分ぐらいの量はあると思うぞ」
「さっすがコイン兄ィ!」
「やった~!」
「コインお兄ちゃん、いつも、ありがとうございます。」
「それは、こちらこそ、どういたしまして、
そう言えば、みんな、僕が教えた泥ダンゴ作りは上手く行ったか?」
「う~ん、いちおう、みんなでコイン兄ィに教えてもらったとおりには、
作ってみたんだけど、
コイン兄ィから、もらった泥ダンゴみたいにピカピカにはならないんだよね」
「ぼくのは、われちゃったんだ」
「私のは、少し光るようにはなったんだけど、まん丸くならないんだ」
「そうかそうか、そんじゃ解体が終わったら、
『泥ダンゴ・マスター』たる、このコインが上手く作れるコツを、
みんなに教えてやるから、少し待ってろよ」
「やった~!」
「ありがとうコイン兄ちゃん」
「マスター、ごきょうじゅのほどを、おねがいします。」
「うむ、皆しかと励めよ」




