エンペラー・トラウト
「姉さん方やコインが、そう仰って下さるなら、
ここは、ありがたく頂いておくっすかね」
パサラより、金のサオをプレゼントされたサナエが、
嬉しそうな表情を浮かべながら、そう告げる
「ああ、そうしときなよ」
「恩に着るが良い」
「ええ、何か有った時なんかに使える、
取って置きの財源として、貰って置いた方が良いと思いますよ」
「あざ~っす!では、ありがたく頂くっす!」
サナエは、パサラに、そう礼を告げると、
自らの魔導リュックへとサオを仕舞い込んだ。
「そんじゃ、色々あったんで少し遅くなっちゃったけど、
そろそろ昼飯にでもするかねぇ」
「賛成」
「そうですね、結構お腹が空きましたね。」
『キュキュ~!』
ポラリやコイン達は、自らの魔導リュックの中へと、
サオや像を仕舞い込みながら、そう会話を交わした。
「そう言えば、大漁とはお聞きしたんっすけど、
魚の方は、どんだけ釣れたんっすか?」
サナエが、皆に尋ねる
「ああ、そうだったね、
こっちが、ファーが素潜りで獲って来た分だよ、
絞めてから直ぐリュックに仕舞ったから、
まだまだ新鮮なままだよ」
ポラリが、そう言いながら、
魔導リュックの中から、
大きな葉にくるまれた1メートル程の魚を8匹取り出す。
通常の魔導リュックは、収納できる空間を拡張しているだけであるが、
ポラリとパサラのリュックは、コウガ王国産の最新式特別製なので、
リュック内で流れる時間が大幅に遅延されているのであった。
「おお!このサイズの魚を8匹もっすか!
ファーの漁の才能は凄いっすね!」
ポラリがリュックより取り出した
魚のサイズと量を見たサナエが、感嘆の表情を浮かべながら告げる
『キュキュキュ~!』
誇らしげな鳴き声で、ファーが声を返した。
「私のも見るが良い」
次に、パサラが、そう宣言をすると、
地面の上に、植物を編み上げた御座の様な物を敷いてから、
その上に、本日最大の釣果をドスンと、
魔導リュックより取り出して置いた。
「マ、マジっすか!?パサラの姉さん、
この魚、全長で5メートルはあるんじゃ無いっすか?
淡水でも、こんな大きな魚が居るんっすね・・・」
サナエが、御座の上へと置かれた
形的には、マスに良く似た巨大魚を見ながら、
唖然とした表情を浮かべながら告げる
「ああ、わたしも、このサイズの淡水魚は初めて見たね、
パサラやコインが言うには、
あの湖の主なんじゃないかとかって話だね」
「私に掛かれば、こんなもの」
「お腹の所がプックリしているから、
中に卵が入ってるんじゃないですかね?」
『キュキュ~!』
「どうするっすかね?
パサラの姉さんが釣り上げた巨大魚を先に食べるっすか?
それとも、ファーが獲って来た方を先にするっすか?」
「そうだね・・・ファーのヤツの方が良いんじゃないのかい?
パサラの方のヤツは、デカ過ぎて捌くのに時間が掛かりそうだし、
ハラが減ったから早く捌ける方が良いだろ?」
「同感」
「そうですね、パサラさんの方のヤツは、
魔導バッグの方に入れとけば、時間が完全に止まってるから、
魚が傷む事もないし、後で捌けばいいですよね」
『キュッ!』