チームプレイ
「遅かったっすね、姉さん方、
そんなに沢山、釣れたんっすか?」
火の番をしながら、昼食を取る予定の場所で、
一人留守番をしていたサナエが、
帰って来た皆を見ながら釣果を質問する
「まあ、魚の方は確かに沢山釣れたんだけど、
思わぬ出来事に遭遇してね、
どちらかといえば、そっちの方に時間が取られたかね」
「大漁アンド棚ボタ」
「パサラさんは超大物を釣り上げたし、
ファーも沢山魚を獲ったんだけれども、
その後の出来事のインパクトが強過ぎましたね」
「ん?湖で何かあったんっすか?」
「ああ、コインとパサラに臨時収入があったね、
ちなみに、コインの方はコレだよ」
ポラリが、魔導リュックの中から、
コインより与かっていた
『金のファー像』と『銀のファー像』を取り出しながら告げる
「何っすかそりゃ!?随分と良く出来たファーの像っすけど、
それって、本物の金製と銀製なんっすか?」
「ああ、私が持った感じじゃ本物で間違い無いと思うね」
「マジっすか!?その大きさで金と銀とかいったら、
結構な値段で売れるんじゃないっすか?」
「ああ、像自体としての作りも、
芸術性が結構な評価をされると思うから、
お貴族様とかに話を持ちかけりゃ、
とんでもない金額を提示するんじゃないかと思うね」
「そうっすよね!
コイン、すっげぇ臨時収入っすね」
「いやいや、その像は、
余程、お金に困った事とかに陥らない限りは、
絶対に売りませんよ」
「え?そうなんっすか?」
「ええ、特別お金に困って居る訳でもありませんし、
何と言っても、モデルがファーの像ですからね、
その像は、家宝として大事に保管して行く心算ですよ」
「あ~、確かにファーがモデルになってる像を、
売りに出すっていうのは、些か気が引けるっすよね」
「ええ、大事にして行きたいですね」
「まあ、コインの場合、
この先、お金に困るなんて事は無いんだろうから、
首都に着いて本拠地を手に入れたら、
自分の部屋とか、居間にでも飾っときゃ良いんじゃないのかい?
それからパサラ、折角なんだから、
あんたのも、サナエに見せてやっちゃどうだい?」
コインとサナエの会話を聞いていたポラリが、
2人の会話が治まったのを見計らって、そう提案する
「うん、分かった。じゃ~ん」
ポラリの提案を受けたパサラが、
何の抑揚も無いセリフと共に、
魔導リュックの中から金の釣り竿を取り出した。
「まさか、パサラの姉さんの方は金で出来てるサオっすか!?」
「そう・・・しかも3本」
パサラは、自らが持つ金のサオを隣に居るポラリへと手渡すと、
残りの2本を魔導リュックの中から取り出した。
「うおっ!?マジっすか!?
マジで3本も、金のサオを手に入れたんっすか!?」
「そう、特別に1本あげる」
パサラは、サナエの質問に、そう返事を返すと、
自らが持つ2本の金のサオの内、1本をサナエの方へと差し出した。
「え?もしかして、もしかすると、
パサラの姉さん、その金のサオを1本、
オレにくれるって言ってるんっすか?」
「そう、留守番の褒美」
「いやいやいや、オレなんて、
タダの火の番をしていただけっすのに、
そんな高価な御褒美は頂けないっすよ!」
「留守番は大事」
「サナエ、像を貰ったコインは別にして、
私も1本、パサラから金のサオを貰える事になってるから、
あんたも、有り難く頂いときなよ」
「サナエさん、パサラさんの折角の厚意なんですから、
頂いても良いんじゃないんですか?」