「釣果は、どうでちょうか?」
「調理器や食卓の準備は、こんなもんで良いですかね?」
ポラリから預かった魔導バックの中から、
簡易グリルやテーブル、イス、食器類などを取り出して並べたコインが、
傍らで簡易魔導調理機を使って、お湯を沸かしているサナエへと尋ねる
「良いんじゃないっすかね?
ヒュードロ村で貰って来た弁当もあることだし、
後は、パサラの姉さんが釣って来た魚を焼くのと、
お茶を淹れる準備を整えて置けば良いと思うっすよ」
「ええ、そうですよね」
ちなみにポラリは、魚を獲る為に湖へと潜りに行っている、
ファーの安全を見守りに行っている
「ヒィ~ット!」
普段は口数も少なくクールなパサラが、
珍しく大きな声を上げる、顔は相も変わらず無表情のままであるが、
最近なんとなくパサラの表情が読める様になって来た
コインとサナエが見れば、上機嫌なのが読み取れたであろう
「魚の方に、引きずり込まれない様に注意しろよ~」
パサラが持つサオが大きく撓っているのを眺めながら、
少し離れた場所でファーの素潜り漁を見ているポラリが告げた。
「大丈夫、自分の体に『重圧』の魔法を掛けてあるから・・・」
「それって、掛けた相手がペシャンコになるアレだよな?
そんなもん、自分に掛けても大丈夫なのか?」
「うん、私のローブは優れた耐衝撃・耐魔法仕様だから、
多少の重みは感じるけど、大した事無い」
「ふ~ん、まあ、ライ陛下が与えて下さった最高級品のローブなんだから、
そりゃそうか・・・まあ、ライ陛下も、
釣りに役立つとは考えても見なかったと思うけどな・・・」
『キュキュ~!』
「おっ、また獲って来たのか?
おお、こりゃまた大物だな、
こんな大物を捕まえられるなんて、ファーは漁でも優秀なんだな」
ザバッという水音と共に水面に浮上したファーが、
口にくわえた1メートル程の大きさの魚をポラリの足元へと置いて、
その成果をポラリへと報告する鳴き声を上げたので、
ポラリは、それを褒め称えた。
普段は、コインの首へと巻き付く為に小型化している体を、
現在は、2メートル程の大きさへと解放している
『キュッ!
キュキュ~』
「おお、分かった。
この魚は、また魚籠に入れときゃ良いんだな?」
ポラリは、足元の魚を湖の水で軽く水洗いをして、
土や葉っぱを落とすと、
水際に括り付けられている魚籠の中へと入れる、
バシャバシャと魚籠から上がる水飛沫からみると、
もう既に、何匹かの魚が入っている様子である
『キュッ!』
それを確認したファーは、再びザブッと水の中へと消えて行った。
「お~い!余り無理をするなよ~!
パサラも何匹か釣り上げているから、
魚の数は、もう十分なんだからな~!」
ポラリは、それを見送りながら、そう声を掛けた。
「湖の主ゲットだぜ!」
パサラの、普段では考えられない程のテンションが高い声に、
ポラリが、そちらへと目をやると、
パサラの足元の地面でドスドスと飛び跳ねる、
体長5メートル程の魚が目に入る
「オイ!その細いサオで、どうやって釣り上げた!?」
「気合?」
「気合だけで、そんな大物が釣り上げられるなら、
猟師の人達も苦労せんわ!」