昼休み
「サナエさん、そろそろお昼休憩の時間じゃ無いですかね?」
ヒュードロ村を朝に出発してから、
街道を進む馬車での旅は順調に続き、
陽が高く昇っているので、馬車の作り出す影も真下へと落ちていた。
「そうっすね、ヒュードロ村で貰った弁当があるっすから、
どっか、馬車を停められる場所を見付けて休憩するっすか」
『キュキュキュ~!』
2人の会話を聞いた
コインの首に巻き付いていたファーが、何かを告げる
「ファーは、何を言ってるんっすか?コイン」
「新鮮な魚を食べたいから、川か湖とかの傍が良いそうです。」
「なる程、そんじゃ確か、
この先にある枝道を、ちょっと入った森の中に、
小さな湖があったと思うっすから、
そこに行って見るっすかね?」
「了解です。」
『キュキュ~!』
サナエが告げた通りに、街道を少し進んだ先に、
右手の森へと伸びる枝道があり、
馬車を右折させてから暫く進むと、
森の中に佇む湖が姿を現した。
コインが、ざっと見た所、
湖は中央が括れたヒョウタンの様な形をしている様で、
その大きさは、縦500メートル・横100メートル程度に見えた。
「姉さん方、昼飯っすよ!」
湖の畔で、少し広めのスペースを見付けて馬車を停車させたサナエは、
御者席と、馬車の内部を隔てる壁にある小窓から、
中に居るポラリとパサラへと声を掛けた。
「はいよ」
「了解」
中の2人から直ぐに返事が返る
「へ~、結構深そうな湖ですね」
御者台を降りて、湖の方を見ているコインが告げる
眼前に広がる湖は、時折、泳ぐ魚が見える程に、
キレイに澄んだ水質に見えるのだが、
その底は見えず、深く濃い青色をしており、
コインの知識では、それは水深の深さを示していた。
「ほう、中々良い場所じゃないかい、
昼の休憩だけで使うには、勿体無い程のロケーションだね」
「むぅ、釣り師の血が騒ぐ」
馬車から降りて来たポラリとパサラが、
目の前に広がる風景と湖を見ながら、そう告げた。
「え?パサラさんって、釣りが好きなんですか?」
余りアウトドアなイメージを持たないパサラの発言に、
驚きの表情を浮かべながらコインが尋ねる
「うん、好き」
「この子の義兄で在らせられる陛下が釣り好きでね、
一緒に付いて行ってる内に、この子もハマったんだよ」
口数が少ないパサラのフォローとして、
ポラリが教えてくれる
「なる程、やってみると結構面白かったりする事って、
割と有りますもんね」
「うむ、釣りは奥が深い」
「姉さん方、コイン、ファーが魚を食いたいみたいっすし、
昼飯は魚を獲ってからにするっすか?」
馬達を馬車から解放して、エサの世話などを済まして来たサナエが、
皆に尋ねる
「ああ、そうだね、
パサラも釣りがしたいみたいだから、
私らは焼き台の準備や、お湯を沸かしたりして待ってようや」
「大物を期待するが良い」
「ファー、危ないから、
あんまり深くまで潜るんじゃ無いぞ?」
『キュキュ~』