一夜明けて
「なる程、折角これ程に大量の残土が出たのじゃから、
これを、ただ捨てるのでは無く、
何かに利用するのも手じゃな・・・」
サナエの意見を聞いたグレソムが考え込む
「爺さんの村には、弓を使える者は居るのかい?」
その様子を見たポラリが、そう問いを掛けた。
「うむ、それ程、頻繁に行商が訪れる訳では無いからのう
食肉を確保する為の猟師は何人かおるぞ、
それから、村を拡張して迎え入れる予定のモーブ村は、
農業に力を入れて居るウチの村とは違い、
狩猟を得意として居る村じゃからなぁ、
魔獣とは戦えなくとも、弓の名人は何人か居った筈じゃぞ」
「そりゃ丁度良いな、どうだい?爺さん、
あの残土を使って、村の四方に物見櫓を建てちゃ」
「むう、パサラ像の方が・・・」
「なる程、ホネノスケさんも魔法が使えるし、
村の防衛に役立ちそうですよね」
「高い位置からの弓での攻撃は、
魔獣は兎も角、盗賊共なんかには有効な攻撃手段っすね!」
「なる程、それは良さそうじゃな、
早速、ホネノスケに伝えて手配をするかのう」
グレソムは、樵スケルトン部隊が森から切り出した木を、
木材加工スケルトン部隊が板や杭に加工した物を、
風魔法や火魔法を使って乾燥させる作業を行う、
魔法使いスケルトン部隊を指揮していたホネノスケを呼び出し、
土魔法が得意なスケルトンを何名か、物見櫓造りへと向かわせた。
空が白み始め、もうじき太陽が顔を出すと思われる早朝、
勤勉な農民が多いヒュードロ村の家々から、
井戸で顔を洗おうと出て来た村人らは、
普段とは何か違う村の風景に、
最初は『オレまだ寝惚けているのかな?』と首を傾げた
しかし、自らの頬を抓り、
自分が確りと起きている事を確認すると驚愕の声を上げた。
「「「「「な、何じゃ、こりゃ~!」」」」」
「静まるんじゃ!皆の衆!」
そこに、村長のグレソムが現われて、
騒ぎ立てる村人たちを落ち着かせる様に声を掛けた。
「あっ、そ、村長、こりゃ一体・・・」
村人の一人が、こんな時に頼れそうな人物が現われた事から、
ホッとした表情を浮かべながら、そう尋ねる
「実はな、前々から話が来ていたモーブ村の連中を、
この村に受け入れ様と思ってな、
その為に、ワシの師匠にも御協力を頂いて、
村の拡張工事と、防衛力の向上工事を行ったんじゃ」
「おおっ!そりゃ良かったですね!」
「ああ、モーブ村の事は気になっていたんだよ!」
「これだけ、ウチの村が広がれば十分に受け入れられますね!」
「なる程、大魔法使い様と仰る村長の御師匠様が・・・」
「流石は、究極の魔法使い様だ!」
「ああ、至高の魔法使いの称号は伊達じゃないな!」
近隣の村の事だけあり、その動向が気になるものの、
自らが暮らす村の現状を理解していた事から、
受け入れを諦めざるを得ない事を理解していた村人らは、
その状況が覆った事に対して、喜びの表情で声を上げた。
「グレソム爺さんが村長をしてるだけあって、
村に暮らす連中も、気の良いヤツが多い様だね」
「うむ、感心な村人」
「村での、パサラさんの評価が何か凄いですね・・・」
「爺さんの、パサラの姉さんに対する思い入れが、
村人たちにも行き届いているんっすね」