突貫工事
「ヒュードロ村の人達は皆、寝静まった様子っすよ」
村の様子を見に行っていたサナエが、
村の外壁の外側にある堀の前で集まっていた
ポラリ、パサラ、コイン、そしてグレソム村長に、そう告げる
「そうかい、そんじゃ、
そろそろ始めるとするかね」
サナエの言葉を聞いたポラリが、そう言った。
「一応、村の皆さんが寝付いたとはいっても、
流石にスケルトン達が土木工事なんか始めちゃったら、
騒音で目が覚めちゃうんじゃ無いんですか?」
コインが尋ねる
「ああ、そりゃそうだね、
しかし、幾ら何でも、村の住人にまで、
コインのユニーク・スキルを知られる訳には行かないから、
村の皆には、もっと深い眠りに入って貰うのさ・・・」
「もっと深い眠りって・・・」
「コイン、100エンで」
ポラリの言葉に首を傾げているコインに対して、
パサラが、そう告げる
「はい、分かりました。パサラさん・・・『コイン・ブースト!』」
今までの経験から、
パサラが自分に100円でブーストを掛けろと、
言っているのを理解したコインは、
頭の中で『マイ・バンク』から100円を引き下ろしてから、
パサラに対してブーストを掛けた。
「うむ、『深眠』・・・オッケー」
パサラが、村の方向へと向かってパーにして突き出した両手から、
柔らかなオーロラの様な光を放ちながら、
村をスッポリと蔽い隠す様な大きさまで広がった魔法が、
スッと消え去った後に、そう告げた。
「よし!今のパサラの魔法で、
村の住人達は、かなり深い眠りに入ったから、
ちょっとや、そっとの騒音ぐらいじゃ起きなくなったよ」
パサラの言葉を聞いたポラリが宣言する
「へ~、パサラさんて、
そんな便利そうな魔法も使えるんですね」
「流石っす!」
「うむうむ、流石は師匠だな!」
「まあ、それ程でもある」
「そんじゃ、村の連中に見られる心配は無くなった事だし、
グレソム爺さんの死霊魔法にも、コインのブーストを使って、
ガンガン土木工事を進める事とするよ」
「コイン、奮発して1エンで」
「はい、分かりました。ポラリさん、パサラさん、
それではグレソムさん、僕が『コイン・ブースト』って
貴方に向かって言ったら、
続けて、何時もの様にスケルトンを召喚してみてくれますか?」
「うむ、先程の師匠とのやり取りで、
コイン君にスキルを使って貰う際の流れは理解したんじゃが、
ワシが、いつもスケルトンを召喚する際には、
『警備に適した者達』とか、『土木作業に向いた者達』とかを、
頭に思い浮かべながら召喚するんじゃが、
今回は、どの様にすれば良いのかのう?」
「コインのスキルを使えば、
いつもより、かなり多くのスケルトンを呼び出せると思うから、
私は、両方とも呼べば良いと思うよ」
「同感」
「堀だけじゃ無くて、
その内側の、板塀の方も作って置いた方が良いと思いますから、
木を加工できるスケルトンも一緒に呼んだ方が良いですよ」
「そうっすよね、そうしとけば、
手が余った時なんかに、新しい村民が住む家なんかも、
建てて置けるかも知れないっすからね」