今夜はごちそう
「こちらが村の井戸となって居りますじゃ」
コインは、村長の案内で獲物を解体する為に村の井戸を訪れていた。
「解体する際に不要な部位を捨てたり、
血を洗い流したりしたいのですが、何時もは如何しているんですか?」
「井戸から離れた場所に穴を掘って埋めたりして居りますな」
「そうですか、そうすると下に穴を掘って、
その上で獲物を吊るし切りにすれば一石二鳥かな・・・」
コインは作業に向いた場所を探して、キョロキョロと周囲を見渡した。
「あちらの木の枝は、どうですかな?」
村長の指差す方向へと目を向けると、
確かに獲物を吊るして解体作業をするのに丁度良さそうな、
枝葉を伸ばした木が目に入った。
「ああ、確かにあの位の枝の高さで丁度良さそうですね、
井戸からも適当に離れていますし、
周囲に家も無いから匂いとかの問題も無さそうですね」
「はい、猟人のピュンピュンさんも、
森の小川で解体している時間が無かった時などは、
あそこで解体して居りましたからな」
「そうなんですか、それでは、あの場所を使わせて頂きますね」
「はい、宜しくお願いしますじゃ、
作業に必要そうな道具は何かありますかな?」
「そうですね・・・穴を掘る道具と、
井戸から水を運ぶ桶みたいな物を借りれますか?」
「分かりました。では今、穴を掘るクワと、
水を運ぶ桶をお持ち致しますから少々お待ち下され。」
「はい、お願いします。」
コインは、道具を取りに向かった村長を見送ると、
先程、見定めた木の近くまで行ってから、背負った魔導リュックを下ろして、
中から取り出した木の蔓を枝に縛り付けると、
同じく魔導リュックから取り出した草原狼を吊り下げた。
「なぁなぁ兄ちゃん、そのソウロウって兄ちゃんがしとめたのか?」
「すっげぇな!村の大人たちもソウロウを見たらにげるのに」
「こんやは、オニクが食べられるのかな?」
声のする方へとコインが目を向けると、
いつの間にやら近くまで近づいていた獣人の子供たちが、
こちらを見ながら話し掛けて来ていた。
頭の耳の形から察するところ犬タイプの獣人の男の子が2人と、
猫タイプの獣人の女の子の様だ。
(流石は、子供と言えども獣人族だな、
全然、気配を感じなかったぜ・・・)
「ああ、そうだぞ!
このソウロウは今日、僕が仕留めて来たんだ
他にも、ツノウサやムツアシの肉もあるから、
今夜は腹一杯、肉が食べられるぞ!」
「やった~!」
「ひさしぶりに、たくさん、オニクが食べられるね!」
「お兄ちゃん、オニクをとって来てくれて、ありがとう!」
「これこれ、お前たち、コイン君の作業の邪魔をしては如何ぞ」
そこに、道具を持って返って来た村長が、子供たちを嗜める言葉をかける
「俺たち、兄ちゃんのジャマなんてしてないよな」
「うん、ここで兄ちゃんをオウエンしてたんだもん」
「お兄ちゃん、わたしたちジャマだった?」
「いや、別に邪魔じゃ無いから見てても良いけど、
解体するのに刃物を使うんで危ないから、あまり近くには寄らない様にしろよ」




