逆境か~ら~の~
「そうして、冒険者としてデビューしてから、
長い事、冒険者パーティーの仲間として、
一緒に、やって来た連中が皆、C級へと上がった時、
万年F級だったワシは、パーティーから追放されたという訳じゃよ」
「まあ、良く聞く話ではあるな」
「世の常」
「ちょっと薄情な気がしますけど、
仕方が無い事何ですかね・・・」
「パーティー仲間の力不足は、
自分らの命にも係わって来るっすからね」
「そして、それから暫くの間は、
一人でも熟せる様なクエストをしながら、
食い繋いで居ったんじゃが、
そういった仕事は、冒険者ギルドの方針としては、
新人の冒険者を主として割り振って居るからのう
力無きベテランのワシは、
然程も経たん内に食い詰める事と相成った訳じゃ」
「グレソム爺さんが、そんな窮状に陥っていた際、
私とパサラが、偶々、クエストの関係でコウガ王国のギルドを訪れた際に、
途方に暮れた様子で、ギルドの酒場に佇んで居た爺さんと出会ったって訳さ」
「死相が見えた。」
「へ~、グレソムさんにしたらタイミングが良かったですよね」
「そんなに困ってた時に、偶々、姉さん達と出会えた何て、
爺ちゃんツイてるっすね」
「ああ、冒険者を辞めて働こうにも、
その当時の段階で、もう既に結構な年じゃったからな、
働き口を探すなんてのは、至難の技だったじゃろうな」
「まあ、そうだろうね、
私なんか、当時の爺さんを見た時、
もう引退した冒険者が、後進の指導にでも訪れて、
熱が入り過ぎて、草臥れて座ってるんだと思ったからね」
「同感」
「ハハハ、いくら何でも、それは酷いんじゃ無いですか?」
「男は仕事を無くすと、ガクッと老け込むって聞くっすからね」
「その頃は、もう何日間にも渡り、
碌な食事が摂れていなかったろうから、
そう、見えたとしても不思議じゃありませんな」
「ああ、そんな爺さんに、
珍しく、パサラが積極的に話し掛けたんだよな」
「そう?」
「そうですとも!
師匠は、途方に暮れていたワシに、
『死霊使いの才能持ちは珍しい』と話し掛けて下さったんです!」
「なる程、魔法に関する話だったら、
割と、パサラさんは話してくれたりしますもんね、
それが、自分と同じ黒魔法の系統で、
珍しい才能を持っていたら、話し掛けたりするかも知れませんね」
「黒魔法使い自体は、偶に居るっすけど、
『死霊使い』となると、
オレも、会うのは初めてっすからね」
「ああ、爺さん本人も気が付いていなかったもんだから、
最初は、キョトンとした表情を浮かべてたんだが、
パサラの話した内容が、徐々に頭に浸透して来るに従って、
驚愕の表情を浮かべながら、
『ワシに、そんな隠れた才能が!?』って叫んだんだよな」
「思い出した。」
「本人としたら、本当に、お金に困って居た時に、
宝くじでも当たった様な出来事でしょうからね」
「自分に、隠れた才能が眠ってた何て聞かされたら、
誰だって、ちょ~テンションが上がる筈っすよ」