恩返し
「はい、実は村で唯一の狩人である『ピュンピュンさん』が森で怪我を負いましてな、
何とか歩ける様には回復したのですが、何しろ元々から高齢の身でもあったが為に、
もう森に入っての狩りは無理そうだとの申し入れがあったのですじゃ、
この様な僻地に位置する村では行商も訪れませんしの、
ここ最近の、この村は慢性の肉不足なんですじゃよ」
「それは大変ですね、何時までも野菜ばかり食べて生活している訳にも行かないだろうし、
何らかの解決策は見つかっているんですか?」
「はい、幸いにもザドス王国で傭兵をしていたピュンピュンさんの息子の
『シュピシュピ君』が今回の話を聞きつけて、奥さんや、お子さん達を連れて村に戻り、
ピュンピュンさんの後を継いで猟人になってくれる事となりましてな、
後1か月もすれば到着する予定なんですじゃ」
「それは良かったですね、それを聞いて僕もホッとしました。
でも、その息子さんのシュピシュピさんと仰る方も立派ですね、
傭兵をしていた方が儲かりそうなのに、故郷に帰って父親の後を継いで猟人になるなんて・・・」
「はい、私達としても大助かりなのですが、
シュピシュピ君としても、今回の事にはメリットがありましたのじゃ」
「・・・と、申しますと?」
「はい、小さな小競り合い程度はありますものの、
この世界で戦争が起こらなくなって久しいですからな、
仕事が無くなった傭兵の方々は年々その数を減らしていて、
冒険者や、他の仕事に鞍替えしたり、
悪くすると盗賊などに身を持ち崩す者も少なからず居りますからな、
シュピシュピ君としても、『今回の話は傭兵家業に見切りを付ける良いチャンスだった。』と
ピュンピュンさんに届いた手紙に記してあったそうですじゃ」
(へ~、この世界って暫く戦争が無いのか、
こりゃ、平和そうな良い世界に来たもんだな・・・)
「それは、お互いに利があったって事で良かったですね、
そうすると、問題としてはシュピシュピさんと御家族が到着されるまでの、
1か月間の間の村の人達が食べる肉を、どうするかって事ですね、
どうでしょう村長さん、そこで一つ御提案があるんですけど、
その1か月間を僕が、この村に留まって代理で狩りをするというのは・・・」
「そりゃ、この村とすれば大助かりですが、
コイン君が冒険者になるのが、それだけ遅れてしまいますが宜しいのですかな?」
「はい、別に急いで冒険者になりたい訳でも御座いませんし
ダンジョンが逃げ出す訳でもありませんからね、
村長さんに、この国の事を教えて頂くお礼代わりに狩りをやらせて頂きますよ」




