奉仕活動
「それにしても皆さん、治療をした割には、
傷から血が滲んでたりしている人が多いですね」
「ホントっすね」
コインが、話し掛けて来た冒険者らに尋ねる
「ああ、俺達みたいな、しがない中堅パーティーじゃ、
人数分の治療薬なんて揃える事が出来ないからな、
傷の重かったヤツらに使う様にして、
俺みたいに程度が軽い傷を負った者は、
川でも見付けて傷口を洗い流すぐらいさ」
「一応、背中のバックにゃ酒はあるんだが、
折角の酒で洗ったりしちゃ勿体ねぇからな、ガハハハッ!」
「言えてる言えてる!ガハハハッ!」
「え~と、僕の、使い魔のファーが白魔法を使えるんで、
皆さん、治療を致しましょうか?」
「そうだな、『袖振り合うも多生の縁』ていうっすからね」
「使い魔が白魔法?」
「マジか?そんなの、初めて聞いたぜ」
「流石はA級が仲間に居るだけあって、
連れてる、使い魔さえも規格外だな」
「ええ、ファーは特別なんですよ、
それで、治療はしますか?」
「ああ、是非にでも頼むぜ!」
「地味に傷がピリピリして、気になるんだよな」
「おう、水場を探してウロつかないで済むだけでも助かるぜ!」
「そんじゃ、やっちゃいますね、
ファー、この人達の治療してくれるかな?
僕がブーストするから、広範囲の『治療』を、お願い出来るかな?」
『キュキュキュ~!』
コインのお願いで、コインの首に巻き付いていたファーが、
スルスルと、コインの頭の上まで登ると、
自分に任せろとでも言う様に鳴いた。
「オッケー、頼むぞファー
さ~てと、確か、さっきのレベルアップで
『マイバンク』が、キャッシュレス化されたとか言ってたから、
多分、金額を頭で思い浮かべるとかで良いのかな?」
コインが、頭の中で『10円引出し』と思い浮かべると、
頭の中で、謎の声が『10円がチャージされました。』と告げた。
「お~、一々自分の手に出さないで済むのは便利だな、
そんじゃ、ファー行くぞ、『コインブースト!』・・・オッケー」
『キュキュ~!』
ファーが唱えると、冒険者たちが透き通った光のドームに包まれ、
その身に負っていた傷がス~ッと消え去って行った。
「お~!ホントに傷が消えたぜ!」
「大した使い魔だな!
ありがとうな!ファー」
「ああ、助かったぜ!ファー」
『キュッ!』
ファーは、冒険者らからの礼に、
『良いって事よ』といった感じに片手を上げると、
再びコインの首へと戻りクルリと巻き付いた。
「そんじゃ、皆さんの傷も癒えたみたいだし、
僕らは行きますね」
「サラバっす!」
「お、おい、赤狼の素材は如何するんだよ?」
「一匹一匹の値段は大した事無いけど、
これだけの数が集まれば、そこそこの値段にはなるぜ?」
「毛皮を剥ぎ取るなら、助けてくれたり、
治療してくれた御礼に、俺達が手伝うぜ?」
「ええ、実は今、僕達は『特別クエスト』の最中でして、
なるべく早く街に戻りたいんで、
赤狼の素材の方は、よろしかったら皆さんにお譲りしますよ」
「オレらには『時は金なり』っすね」
「『特別クエスト』中だってのに、
俺達を助けてくれたのか!?」
「そいつぁ、ありがた涙がチョチョぎれるぜ!」
「ありがとうな!お二人さん」
「ええ、そういう訳でして、
僕らは急ぎますんで、もう行きますね?
それと、赤狼の素材は、どうぞ遠慮なさらずに」
「また、どっかで会ったら、
一杯酒でも、ご馳走してくれれば良いっすよ」
「おお、そんじゃ遠慮無く頂いとくぜ」
「今度、どっかで会ったら絶対に奢るからな!」
「また、どっかで会えると信じてるぜ」
「ええ、皆さんもお元気で」
「これにて、ドロンっす!」