ワラにも縋(すが)る
「そうして、ボクとビッガーは、
その商人の人・・・オヒトヨシーさんって名前の方なんですが、
その方と共に、コウガ王国を出て、
ここ、ラメール魔法国へと向かった訳なんですけど、
最初は、この国の首都である学園都市ツクバーダを目指していたのですが、
何とか、ボクとビッガーが元の世界へと帰る方法が無いかと、
途中で寄った街々で、オヒトヨシーさんにも協力をして貰って、
街の人達に、他の世界から来た人の話を、
どこかで、聞いた事がないかを調べて周ったんですけど、
何人かの人は、そんな話を聞いた事があると仰るのですが、
元の世界へと帰れたのは、
魔王を倒した『勇者イチロー』の話ししか知らないとの事だったんですよ」
「皆さん、口々に、次の魔王が現われるのは、
大分、先の話しになるだろうから、
この方法を使うのは、まず無理だろうと仰られていました。」
「まあ、実際に現れられても、
倒せるかどうか分かりませんからね・・・」
「ええ、何しろ、ボクもビッガーも攻撃手段を持っていませんから、
その方法は、諦めるしかありませんね」
「魔王の攻撃には、この着ぐるみで耐えられるかも知れませんが、
倒す事は、まず不可能ですね」
「それで、その、暫くは帰れそうも無いって事に、気が付いてからの、
マッキー達は如何したんだい?」
「人間、諦めが肝心」
「ツクバーダまで行けば、何か情報が掴めるとか思わなかったんっすか?」
「ええ、オヒトヨシーさんのお蔭で、
首都と変わらないレベルの情報量を抱えている、
凄腕の情報屋って方とも、お会いして話す事が出来ましたので、
首都まで行っても無駄足になると分かっていたんですよ」
「その時点で、ワタシ達は如何すれば良いか分からない状況でした。」
「そうですよね、僕も何処に行って調べれば良いかだなんて、
全然、見当も付きませんからね・・・
まあ、一つだけ思い浮かぶのは、
何らかの方法で、この世界を統べる女神様に連絡を取れれば、
マッキーさん達みたいな、特別なケースは、
救済措置みたいのが取られるかも知れませんね」
「そうだな、マッキー達の場合は、
女神様に呼ばれた訳じゃ無くて、
タクラムのヤツに、無理やり召喚されたんだから、
その辺の事情を説明すれば、何とかして下さるかも知れないな」
「同感」
「女神フェルナ様は、慈悲深い神様として、
有名な御方っすからね」
「「ホントですか!?」」
「ええ、余りにも期待を掛けられると、
上手く話が進まなかった場合に困るんですけど、
女神様に直接じゃ無くて、
間接的に連絡が取れるかも知れない方法がありますんで、
今度、その機会がありましたら、
マッキーさん達の事を相談してみますよ、
まあ、アレに、そこまでの権限があるのかは、甚だ疑問なんですが・・・」
「ああ、あの御方に相談するのか」
「無理っぽそう」
「誰の話しっすか?」
「コインさんに、そんな伝手が!?」
「凄いですね!」
「いえ、アレは伝手なんて良いもんでは無いんですけど、
女神様に連絡が取れる可能性は、一応は、ありますので、
余り、期待を持ち過ぎない様にしていて下さいね」