第一村人発見
「おっ、やっとこさ村らしきものが見えて来たぞ」
コインが森を出て、草原の中に伸びる1本道を歩き始めてから、
およそ1時間ほどの時間が経過して居り、
その間、森でも遭遇した角がある兎魔獣2頭と、
新たに狼に似た魔獣を3頭倒して魔導リュックへと収納している、
流石に、その場で解体する訳にも行かなかったので、
草原で倒した魔獣は、そのままの姿で入れられていた。
「こちらの世界に来て初めての村だからな、
出来れば、人当たりが良い人が多い村だったら助かるな」
日本に居た頃は、特別コミュ障という訳でも無かったのだが、
こちらの世界の常識や知識に今一つ自信が持てない状況なので、
初めての村での対応は結構大事な事だと認識しているのであった。
「おっ!第一村人発見だぞ」
目的の村が近付いて来るにつれて、村の全貌が見渡せる様な状況となって来る、
木造の平屋造りの家屋が30棟ほど建っており、
その周りを1メートル程の高さの木塀がグルリと囲っている、
2メートルほどの幅がある村への入り口は開け放たれており、
その横に同じ様な幅の木塀が立て掛けてあるところを見ると、
夜の間だけは入り口を塞いでいるのであろう・・・
コインが発見したという第一村人は、
村の入り口近くにある畑で何やら作業をしている人物であった。
「こんにちは~、ちょっとお話を聞かせて頂いても宜しいでしょうか?」
村の入り口へと近づいたコインは、その人物に話し掛けてみる
「はいはい、別に構いませんぞ、
おや、そのお姿からすると冒険者の方かな?」
畑に、しゃがみ込んで何やら作業をしていた人物が、
頭に被っていた麦わら帽子の様なものを取りながら立ち上がって、
コインの問いかけに答えた。
「いえ、まだ冒険者では無いんですけど、
この国で冒険者になってダンジョンに潜る為に、
他の国から参りましたコインと申します。
失礼ですが、この村は獣人の方々が暮らす村なのですか?」
コインは、自らに答えを返した人物を見て、
多少の驚きを含んだ声色で質問を重ねる、
それは、目の前に立つ第一村人の老人の頭に犬の様な耳が付いていたからであった。
「いえいえ、別に失礼でも何でもありませんぞ、
仰る通りに、この村は獣人族の者達が暮らす村で、
『チキチキ村』という名の村ですじゃ、
ワシは、この村の村長をして居ります『ケンケン』と申しましての、
この年寄りの知識で役に立ちますのなら、何でもお聞きになって下って結構ですぞ」
「村長さん名前!名前!」