夏のにおい
「駐車場まである・・・」
コインが運転する魔導車が、地球の遊園地の様な装いをした
『ディスティニーランド山』とみえる場所へと到着すると、
山の麓はグルリと、高さ3メートル程の高さの白壁に囲われており、
白壁の前には、周囲の原野からは浮きまくって見える、
黒いアスファルトっぽい素材が敷き詰められて、
1台ごとの白線までもがキチッと引かれた駐車場らしき場所があった。
「何だい?この地面に敷き詰められてる黒いのは、
いくつかの白い升の中に、
私らの前に来た、冒険者の連中の物と見られる馬車が何台か、
置かれている所から見ると、
馬車置場とか駐車場なんだろうけど、
一般的に使われている石版とか砂利とは違うみたいだね」
「変な臭いがする」
「何か、油っぽい臭いっすね」
「これは、地球にあるアスファルトと呼ばれる素材にソックリですね、
日本では、主に道路や駐車場などに使われていました。」
「なる程ね、コインのオリジナルが暮らす世界の素材って訳か、
何で、そんな物が、ここに敷き詰められているのかって~のが、
気になるところだね・・・」
「慣れるとクセになる臭い」
「マジっすか!?パサラの姉さん、
オレは、この臭いは好きになれそうも無いっすね」
獣人のサナエの鼻には、アスファルトらしき物の臭いがキツイ様だ
「何か、ここは怪しい感じがしますから、
この魔導車は、別の場所に停めた方が良いですかね?」
「そうだな、一応こいつは、街長さんから借りて来た物だし、
ここに停めて、もし魔導車に何かあって、
弁償とかいう話になったら嫌だしな」
「同感」
「それは勘弁して欲しいっね」
「じゃあ、少し離れた場所に停車する事にしますね」
コインは、皆に、そう告げると、
そのまま魔導車を移動させて、謎駐車場から離れた場所で停めた。
「よし、そんじゃ各自、装備を整えてから、
あの場所を調べ始める事とするよ」
「了解」
「分かりました。ポラリの姉さん」
『キュキュ~!』
「ポラリさん、魔導バックは如何しますか?」
「そうだね・・・もし戦闘にでもなったら邪魔になるだろうし、
各自、魔導リュックに簡易食料だけを詰め込んで、
バックは魔導車に置いて行く事にしよう」
「賛成」
「そうっすね」
「分かりました。」
コイン達は、各自、防具や武器を身に付け、
身の回りの物や、野営に必要な物を、
其々の魔導リュックへと詰め込むと、
自らの背中に背負った。
「よし!各自、準備が整った様だね、
忘れ物は無いかい?・・・そんじゃ出発するよ!」
「おー」
「頑張るっす!」
「気を付けて行きましょうね」
『キュキュ~!』