第七話
翌日、俺とサラは近くの古書店をいろいろ当たってみたが、めぼしい情報は得られなかった。
サラは期待が大きかっただけに、今は見るに堪えない落ち込みようだった。
「そーいち、手掛かりなかったね……」
「まあ、そう簡単に見つかるとは思っていなかったけどな」
二人でにぎわう通りをとぼとぼ歩く。
しかし、全く進展がないのも困りものだ。
俺も、いつまでもこうやってサラに付き合っていられるわけではない。
なにか手を考えないとな、とそんなことを考えていたとき横から声が聞こえてきた。
「そこのおねーさん、一緒にお茶でもどうかな?」
見ると、甘味処の前で若い男がなにかを串で刺した菓子を食べながら、こちらに向かって手を振っていた。
金の髪に蒼い瞳。このあたりではあまり見ない容姿だ。着ている服も見たことのないものだ。
一言でいうとさわやかという単語が似合う男ではあるのだろうが、その見慣れない風貌も手伝ってなんとなくうさん臭さい。
まあ、それは偏見か。
「おねーさん、なにか落ち込むことがあったのかな。なら、そんなときには甘いものがいいよ。これ、東の方で有名な食べ物らしくって、ダンゴっていうんだって」
男はそういいながら、脇に山のように積んであるダンゴのひとつをサラに差し出した。
サラはその言葉につられたのか、ふらふらと男の前まで歩いていきそれを受け取る。
「おいサラ、知らない奴に食い物をもらうな」
「まあまあ、そんなに怒らないで。おにーさんも一本どう?」
男はへらへら笑いながら、俺にそのダンゴとやらを一本差し出した。
「いらない」
男は俺の言葉にとくに反応を見せず、差し出したダンゴをそのまま自分の口に運んだ。
「それでおねーさん、なんでそんなに落ち込んでいたの?」
男は食べ終わったサラに追加のダンゴを渡しながら、さりげなく横に座らせる。
俺は男のその馴れ馴れしい態度にいらいらした。
「……探し物が見つからないの」
サラは男の質問に律儀に答える。
「へえ、何を探しているの?」
「竜」
サラははっきりとその単語を口にした。
俺はてっきり男も大笑いではなくとも、レンジと似たような反応をすると思っていた。
つまり、少し小ばかにするような態度という意味だ。
しかし予想に反し、男は何やら考えるようなしぐさを見せた。
「……」
「おい、急に黙ってどうした?」
男に尋ねる。
「え?ああ、いやその探し物に少し心当たりがあってね。少しばかり君たちに協力できるかもしれないっ て思って」
「なんだって⁉」
今この男、何と言った。
「お前、心当たりって。もしかしてその竜についてか」
「もちろんだよ」
男は得意げにうなずいた。
にわかに信じられない。だが、とりあえず話を聞くだけの価値はありそうだ。
「まあ、心当たりというより俺自身が本命というか」
「?どういう意味だ」
「まあ、見てくれたらわかるよ」
男はそう言いながら、持っていた荷物を探る。その際にサラの口にダンゴを追加する。
というか、こいつはいつまで食っているつもりだ。
男が荷物の中から取り出したのは一冊の本だった。よく見るとそれは絵本だった。
「この絵本、俺が書いたんだよ」
男は少し照れながら、俺に本を差し出した。
表紙を見る。タイトルには『竜と人間のはなし』と書かれていた。




