第五話
「竜ってあの竜か?その、おとぎ話とかででてくる」
「ああ、その竜で合っているよ。あいつは出会いざまに、真面目な顔で俺にそんなことを言ってきたんだ」
それを聞いて、レンジは大笑いした。
くそ、だから言いたくなかったんだ。
そんな俺の心中を知ってか知らずか、レンジはひとしきり笑ったあとこんなことを言い出した。
「あの子のこと気にいったよ。かなり面白い子じゃないか。よし、俺もその竜探しに協力してやるよ。だ
から、あの子のことはお前がちゃんと面倒みてやれ」
「お前、正気か?もっとよく考えろ。それに、なんでそこで俺があいつの面倒をみることになるんだ」
「大丈夫、ちゃんと考えているよ。途中で放り出したりはしないさ。あと、あの子どう見たってお前にな
ついているじゃないか。なら、俺ではなくお前があの子の面倒を見るべきだろう」
俺はレンジのある言葉に耳を疑った。
「別にあいつは俺になついているわけではないだろう。たまたま頼れるやつが俺だけだったってだけで、
ほかに助けてくれるやつが現れたらそっちについて行くんじゃないのか」
「でも、少なくともお前のことは信頼していると思うぜ。そうじゃなかったら、こんなところまで黙ってついてこないだろう。まあ、お前が脅して連れてきたっていうのなら話は別だが」
「そんなわけあるか」
俺の言葉を聞いてレンジは満足そうにうなずいた。
「なら、間違いないよ。それに、行き倒れの心配をするなら、ここであとは勝手にしろと言うのもどうかと思うぜ。別にセルリアに着いたから安全ってわけでもないだろ。金がなかったら生きていけないのは、どこにいても同じだ」
レンジの言葉に納得しかけたが、俺ははっと気が付いた。
「お前、もっともなことを言っているようで、ただおもしろがっているだけだろう」
「まあ、これも何かの縁だよ。大丈夫、俺もできる限り協力してやるから、な」
レンジはにっと笑って、俺の肩をたたいた。
俺は大きくため息をつく。
レンジはなぜかやる気に満ちている。今から説得するにしても骨が折れるだろう。
ならすべてはサラしだいってことか。サラが断ればこの話もすべてなしだ。
「サラ、こっちに来てくれ」
後ろでおとなしく控えていたサラに声をかけた。
「へえ、あの子サラちゃんっていうのか」
レンジは呑気にそんなことを言う。
くそ、こっちの気も知らないで。
「そーいち、なに?」
サラは俺がやったのと同じように、慎重に商品の間をくぐりながらこちらに来た。
「お前、これからどうするか決めているのか?」
「ううん、決めてない。どうやって情報をあつめようかなって考えてた」
「泊まる場所とかは?」
「まだ、なにも。私ここに来たの初めてだし、お金ももってないから今までそーいちと泊まっていた、 宿ってところも使えないし」
「つまり、当てがないってことだろう」
レンジが急に会話に入ってくる。
「おいレンジ、いきなり口をはさむな」
「まあいいじゃないか。なあサラちゃん、それじゃあこのままソウイチの世話になるっていうのはどう
だい?」
サラはいきなり顔を出してきたレンジに驚いた様子だった。
「えっと、そーいちこの人は?」
「ああ、この店の店主のレンジだ。俺の仕事の取引相手で、まあ信用できる奴ではあるよ」
「そう」
サラはレンジの顔をじっと見た。そして、少し首を傾ける。
「それでレンジ、さっきの質問はどういう意味?」
「どうもなにも、そのままの意味だよ。もしこれからもソウイチのところにいるっていうのなら、俺もその竜探しに協力しようって思っただけだ」
「でも、そーいちは俺の役目はセルリアに着くまでだって」
「お前、そんなこと言ったのかよ」
レンジが肘で俺を小突く。
「……お前がいいなら」
俺の言葉に、サラは少し考えたあとこう言った。
「なら、私はそーいちと一緒にいたい」
「決まりだな」
レンジはにやりと笑った。




