第四話
「レンジ、居るか」
そう言いながらドアを開けた。
向かったのは一軒の店だった。
わりと年季の入った木造の建物だ。しかも、この店は本道からそれたところにあるため場所はかなりわかりにくい。
ただ、その分店内はかなり余裕があり、品物も豊富に揃っていたりする。そのことから知る人ぞ知る隠れた名店などと呼ばれていた。
「これは、戦争の道具?ずいぶんたくさんあるみたいだけど」
「ああ、ここは店主ご自慢の武器庫というわけだ」
俺のあとに続いて入ってくるサラが物珍しそうに眺めていた。
たくさんの剣や槍、銃などの武器や、さらに盾や鎧などの防具までが店内に所せましと並ん
でいる。俺はそれらの間を慎重に潜り抜けていく。
「サラ、勝手に商品に触るんじゃないぞ」
この店にある武器は、なまくらから名剣と呼ばれるものまで様々だ。いわくがあるものもそれほど珍しくない。
店主の姿が見当たらない。どうやら奥に引っ込んでいるようだった。
「おい、レンジ来たぞ」
大きめ声で店主の名前を叫ぶ。
「そんな大声出さなくても、聞こえているよ」
奥のほうからそんな声が聞こえ、大きい箱を抱えて、この店の店主であるレンジが顔を出した。ひょろりとした体格の赤髪の青年だ。
「レンジ、あんな風に店を空けていてちょっと不用心じゃないのか?」
ここにきて最初に感じたことをレンジに言う。
「奥にものを取りにいっていただよ。別に、いつも店を空けているわけじゃない。お前の来るタイミングが悪かっただけだ」
荷物を置き、毒づきながらレンジは答える。
「ソウイチ、待っていたぜ。お目当てのものはちゃんと手に入れられたんだろうな」
ああ、と答えながら荷物から大き目のケースを取り出した。それをカウンターの上におく。
「西国の銃だったな。今回は苦労したよ。おかげで二輪はやられちまっって、帰りは徒歩だ」
「そりゃあ災難だったな。なら、途中で調達すりゃあよかったんじゃないのか?」
「ああ、そのつもりだったんだがあいにく持ち合わせがなくてな。さらに、途中で思わぬ拾い物もあった わけで」
俺の話を聞いているのかいないのか、はなしの途中でレンジはさっそくケースを開ける。中に入っているのは一挺のライフルだ。
「前の型からだいぶ改造されているな。威力も上がっているだろうし、なにより持ちやすい。お前、いい 仕事したな」
レンジ感心したように呟きながら、手に持ったライフルを眺めている。
「ああ、手に入れるのに苦労したんだ。報酬は弾めよ」
「わかっているよ。また次もよろしく頼む」
と、そこで初めてレンジは後ろに立っているサラの存在に気付いたようだった。
「おいおい、お前が女の子を連れているなんてはじめてのことじゃないのか。どうした、誘拐でもしてきたか?」
レンジが俺をからかうように言う。
そんなわけあるか。
しかし、確かにこの店に女を連れてくるのは初めてのことだった。
「別に、おまえが思っているような関係じゃないよ。探し物があるっていうから、少し手伝ってやってい るだけだ」
「へぇ、それこそ珍しいな。お前が人助けだなんて」
そんなことはないと思いたい。
「まあ、なりゆきだよ。あいつは金もないうえにかなりの世間知らずみたいだからな。まあ、誰もいない
場所だったしそのまま行き倒れてでもされたら目覚めが悪い、てなわけでここまで連れてきただけだ」
「へー、じゃあそのなりゆきでその探し物に最後まで付き合ってやろうと?」
「……いや、そんなつもりはなかったが」
俺が言い淀んでいるのを見てレンジは首を傾げる。
「なんで?いいじゃないか、見つかるまで面倒みてやれよ」
レンジはにやにやしたまま、突然そんなことを言い出した。
俺はおい、とレンジの発言に抗議する。
「他人事だからってそんな簡単に言うな。第一お前、あいつが何を探しているのかも知らないだろ」
「へえ、なんだってんだ。言ってみろよ」
「……竜を、探しているらしい」
レンジは俺の言葉に目を大きく開いた。




