第二十四話
「これではなしは以上じゃ。なにか、質問はないかの。今なら答えてやる」
「………」
サラはしばらく考えたあと、口を開いた。
「………ひとつだけ」
「なにかの」
「もう仲間は、ほかの竜は生きていないの?」
その質問で、サラがここに来た目的を思い出した。そうだ、サラはここに仲間を探しに来たのだ。
老人は目を伏せ、首を横に振る。
「今現在、生きている竜はもうおぬしだけじゃ」
「そう。ならもういい」
「そうか。これでやっとワシも目的を果たすことができた。それでは、ここいる竜たちと共に消えるとしようかの」
そなたらのこれからに幸おおからんことを、そう言って老人は姿を消した。
眼の前の大地は元の春の景色へと戻っていく。
「雪が」
季節外れの雪が、記憶が消えても降り続けていた。その白く軽やか舞い踊る様子は、まるで竜たちの安眠を願う鎮魂歌を奏でているようでもあった。
「サラ、行こうか」
「うん」
サラは大きく翼を広げる。その背に乗り、俺たちは名もなき島を後にした。
もう、後ろは振り向かない。俺もサラも前だけを向いて生きていく。
「ねえ、そーいち」
どこまでも続く海を渡りながらサラは尋ねた。
「なんだ」
「本当にそーいちはずっと私のそばにいてくれるの?」
「ああ、俺はおまえのそばにいて、おまえを守ってやるよ。だから、安心して俺の隣にいろ」
俺は背中に抱える大剣に手を当てる。これは、俺にとって竜を殺すための剣ではない。サラを守るためのものだ。
「ならそーいちは、私だけの騎士だね」
サラは嬉しそうに言う。
ああ、俺は命にかえてもお前を守ることをこの剣に誓おう。お前が幸せに生きることが、竜たちの、リゼやフェルトの、そして何より俺自身の願いなのだから。
前を向く。目の前の海がどこまで続くのはわからない。
けれど、サラとならどこまでも行ける。




