第二十一話
「サラ、目的の島には行けたのか?」
「………まだ」
「なら、一緒に行こう。真実を一緒に見に行こう」
「真実?」
「ああ、あの男はそこで竜のすべてわかると言っていた。もしかしたら、つらい現実かもしれ
ない。でも、それでもふたりでならきっと大丈夫だと思う」
「そうだね。そーいちと一緒だったらどんなことでも大丈夫」
お互い、顔を合わせて笑いあう。幸せだなと思った。
「それじゃあ、行こうか」
サラは翼を大きく広げる。
「おにーさん、これからあの島に向かうの?」
離れた場所にいた男は、俺たちの様子を見てそう声をかけた。
「ああ、お前には世話になった」
「別にいいよ。あの子が幸せになるなら、俺はどんな結果になっても構わないよ」
そうだ、と男は背後から何かを取り出す。
「これは君にあげるよ。俺が持っていても仕方がないしね」
布で巻かれたそれは、あの伝説の剣だった。
「どう使うかは君しだいだよ」
ありがとう、そう言って受け取る。
「そーいち、乗って」
「ああ」
サラの上に乗る。女の子の上に乗っていると思うとかなり気が引けるが仕方がない。
「リゼ」
「ええ、わかっているわ。気をつけていってきなさい」
周りの景色が一瞬で変わる。
そこは、空の上だった。地面がはるかに遠い。自分が雲と一緒に流れているのがわかった。
「そーいち、大丈夫?」
「ああ、とくに問題はない」
「リゼが、近くまで運んでくれてた。あれが、たぶん言っていた島だと思う。あそこからは不思議な力を感じるから」
「お前、そんなことがわかるのか?」
「うん。もう、人間の体じゃないから。感覚も人間のときよりはるかに優れてる」
下を見る。
そこは大陸の終わりだった。その先には海が果てしなく続いていた。
その海の真ん中に小さな島がひとつ浮かんでいる。きっと、あれがあの男の言っていた島なのだろう。
「なあサラ、おまえあそこに行ったことはないんだよな」
「ない、と思う」
「思う?」
「私には記憶がないから」
そういえばあの男もそう言っていたな、と思い出した。
「気付いた時にはもう、リゼのところにいたの。だから、それ以前は私もあそこにいたのかもしれない」
「なるほど、そういうことか」
「時々、夢をみるの。私の目の前で他の竜たちが人間に殺されている夢。首を切られて、真っ赤な血が噴き出していた。もしかしたら、これは無くした記憶なのかもってずっと思っていた」
「………それは、行ってみればわかることだ」
「そうだね。それが本当にあったことなのか、私は知りたい」
サラが見た夢。
それが実際に起こったことならどうしてサラは生き残った?あの島で本当はいったい何があった。
「そーいち、下に降りていくよ。気を付けて」
「ああ」
サラはゆっくりと体を傾けていく。
容赦なく襲ってくる風に俺はとうとう目を開けていられなくなった。




