第十四話
竜。
それは、伝説上の生き物で。
ただ物語に出てくるだけの存在で。
そんな存在をサラがはずっと探していて。
「ならどうして、お前は竜を探していたんだ」
だって今、竜はお前自身だって。
「うん、だから私以外の竜を探しているんだよ」
「一体、なんのために」
「私が、ひとりぼっちだから、かな。ひとりはとても嫌なものだから、仲間を探しに行こうと思ったん だ」
仲間を、探しに。
「でも、なんの手掛かりもなくて。どうしたらいいのかもわからなくて。そんなときに、そーいちと出会った」
サラと出会ったときのことを思い出す。俺の前に降りてきたサラは本当に嬉しそうな顔をしていた。
「まだ人間のことをよく知らなかったから、正直どう接していいのかもわからなかったけど。まさか人間
が空を飛べない生き物だなんて思わなかった」
それでもサラは必死に俺に頼み込んで。
「まさか本当にこんなことに協力してくれる人間がいるとは思っていなかったから、そのあともついそー いちの優しさに甘えてしまったんだ。でも、それも今日で終わりだね」
どうして。
「あの男が話していた物語。あれはきっと本当のことだと思う。覚えているでしょ、竜と人間が昔一緒の 存在だったって」
もうわかるでしょ、とサラの目はそう俺に問いかけてくる。
「竜と人は一緒にはいられない。一度別れてしまったものはもう戻らない。だから、そーいちがもう私に
協力する必要はないんだよ。これからはひとりで仲間を探すから」
さようなら。
サラはそう言って、くるりと俺に背を向けた。
もう、こちらを振り向くこともしない。
それはサラの覚悟を示していた。
あの背中をはやく追いかけないと。
――――一度別れてしまったものは、もう戻らない
一瞬、サラの言葉が頭に浮かんだ。
あの背中を見失ってしまったら、もう二度と見つからない。そんな気がした。
しかし、どうしても足を一歩前に踏み出すことができなかった。
ほっとけない存在。俺にとってサラとはそんな関係だったはずなのに。
サラが竜だった。
その事実が俺の心に重くのしかかっていた。
夕日の中に、サラの影が消えていく。
俺はただ、それを呆然と眺めていることしかできなかった。




