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白き奏者のレクイエム  作者: 長月ヨウ
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第十三話

 走る。走る。

 セルリアの街の中をとにかく必死に走りまわった。

「くそ、あいつどこに行ったんだ」 

 心当たりがある場所はすべて探した。しかし、サラはまだここに来たばかりで、そんな場所は数えるほどしかない。そして、サラはそのどこにもいなかった。

 足を止め、考える。

 もし、サラが空を飛んでいたらいくらでも遠くにいけるだろう。しかし、それなら必ず目撃者はいるだろうし、街中大騒ぎになっているはずだ。

 しかし、あちこち走り回ったがそんな騒ぎになっている場所はなかった。

 そういえばと、ふと頭にある予感が生まれた。たしかサラは、竜についてひとつ手掛かりを得ていたはずだ。

「東の、名もない島……」

 嫌な予感がした。

 あいつ、ひとりでそこに向かうつもりか。

 俺はまさかとは思いながらも、入り口の門に向かって走り出した。



 門に向かって走りながらも、頭の中ではさっきのレンジの言葉を繰り返していた。

――――あの子、人間じゃないのか?

 確かに変わった奴だと思っていた。

 空から急に降りてくるし、いきなり竜を探しているとか言いだすし。

 それでも俺にはサラは普通の人間の少女にしか見えなかった。しかし、あの男の言っていたことも気になる。

 くそ、サラの正体ってなんだよ。

 それはサラに会って直接聞くべきなのだろう。そのためにも俺の前からいなくなる前に早く見つけなくてはならない。


なあサラ、お前は俺にいったい何を隠している。



 サラは門の近くで、誰かを待っているかのようにじっと立っていた。

 俺の顔をみると、いつものように、

「あっ、そーいちだ」

 なんて言って笑いかけてきた。

 俺はそんなサラの様子を見てほっとする。

 なんだ、サラはいつもどおりじゃないか。やはりレンジの勘違いだったのだろう。いきなりレンジの様子がおかしくなるから、きっとサラは驚いて逃げただけじゃないのか。

 そんなことを考えた。

「待っていたら、もしかしてきてくれるかもって思ってた」

 サラは明るい口調でそう言いながらも、なぜか少し悲しそうだった。

「サラ、お前どうしてこんなところにいるんだ。いきなり飛び出して、レンジも心配していたぞ。とりあ

 えず急いで店に戻ろう」

 俺はサラの腕をつかもうとした。しかし、サラはそれを許さなかった。

 俺の手を避けるように一歩後ろに下がった。

「私はもう戻れないよ。レンジに聞いたんだよね、私が人間じゃないって」

「でも、それはレンジの勘違いじゃ……」

「本当に、そーいちはそう思っているの?」

「……」

 俺は言葉を詰まらせた。確かに、レンジの様子は尋常じゃなかった。

「そーいちも本当はうすうすわかっていたんでしょ。だって、出会ったとき私空を飛んでいたんだから。

 私、知らなかったんだ。人間は普通空を飛ばないって」

 サラがなにを言っているのかわからない。

 いや、わかろうとしていないだけか。

 俺がなんとなく後回しにしていた疑問を、今、サラの口から無理やり答えを突きつけられている気分だった。

「私はレンジの言ったとおり人間じゃないんだよ」

 サラは笑顔でそう言った。しかし、それは痛々しいほどのつくり笑顔だった。

 証拠を見せてあげるよといって、サラは俺に近づいてくる。そして、両腕を俺の腰に回しギュッと体を密着させた。

 冷たい。

 服の上からでもわかる。サラの体はまるで氷を抱いているかのようにひどく冷たかった。

 それは生きている人間の体温ではありえないことだった。

そして、さらに気が付いた。サラの心臓は生きるための機能を果たしていないことに。

体の芯まで凍り付きそうな気がして、思わず体を離していた。

「おまえ、その体」

「これでわかったでしょ。私の体は生きている人間のものじゃないって」

 そーいちにもばれてしまったなとサラは呟いた。

「……おまえはもう死んでいる人間ってことか」

 サラはかぶりを振る。

「ううん、私はちゃんと生きてるよ。ただ、死んだ人間の体を借りているってだけで。死んだものが生き 返るなんてことはありえないから」

 サラの言っている意味がよくわからない。

 死んだ人間の体を借ている。なら、サラの正体は一体なんだというのだろう。

 いや、そもそも死んだ人間の体を借りるなんてそんなことありえるものなのか。

「いや、普通はありえないよ。そんなことができるのは神様くらいのものだから」

 サラはくすりと笑う。

「だから私はその神様に普通でなくしてもらったんだ。正確に言うと、神様だったひとにだけど」

「それじゃあ、お前の正体は一体なんなんだよ」

「そうだね、そーいちには私の正体についてきちんとはなさないとね。そーいちには嘘はつきたくない」

 サラは俺をしっかり両目で見据えて、はっきりした口調でこう言った。


「私は、竜だよ」

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