第十話
というわけで、俺たちはレンジの店に向かうことになった。
「レンジ、なにか情報はみつかったか」
扉を開け店に入ると、レンジは商品の整理をしているようだった。幸い客はひとりもいないようだ。
前に来たときも客がいなかったし、この店に客がいなかったことを思い出し、少しこの店の経営状況が心配になった。
まあ、余計なお世話か。レンジに言ったら、お前が来たから客がどっか行ったんだとかなんとか理不尽なことを言って怒りだしそうだ。
「なんだ、ソウイチか」
「なんだってなんだよ」
レンジは俺の顔を見るなりそう言った。
「いや、別に今お前に仕事を頼んでいるわけでもないからな。お前の顔をみてもうれしなんともねえよ」
「そうかい、それはお互い様だ。しかし、この顔はどうだ」
俺は後ろについてきていたサラをぐいっと引っ張って、レンジの前に立たせた。
「レンジ、お客さんになにか聞けた?」
サラは首を少し左に傾けながら、レンジに問いかけた。
「あっ、サラちゃん。いらっしゃい」
サラの顔を見るや否や、レンジは調子をいつものように切り替える。
現金なやつだ。
「ああ、竜についての話だったな。竜そのもののことではないが、少しおもしろい話が聞けたぜ」
「面白い話?」
サラは少し興味ありげに少し身を乗り出す。
「なんでも竜を殺せるとまで言われている剣が、東のほうの国で見つかったらしい。なんでも、旅の男がその剣を調べてほしいと持ってきたそうだ。黒い巨大な剣らしいぜ。んで、調べてみたらその伝説の剣じゃないかって国中で大騒ぎになったそうだ。竜の伝説は東の方では結構有名なはなしらしくてな」
「それで、その剣と旅の男はどうなったの?」
「さあ。剣をもったまま、ふらっと消えちまったそうだぜ。まあ、旅人だっていうはなしだからな。また、ふらっと旅に出ちまったんじゃないかな」
「そう」
サラはがっかりした様子だった。
「まあ、これはあくまで噂でしかないからな。真実かどうかもわかんないぜ
竜を殺せる剣。それはあの男の絵本にも出てきていた。
嫌でもレンジのいう旅人とあの男が重なってくる。
いや、確証もないのにこんなことを考えるのはよくないか。
「俺が聞いたのはそれくらいかな。お前らはどうだったんだ」
俺は先ほど出会った男についてレンジに話した。ただ、男がサラのことを意味ありげに言っていたことは伏せた。
俺が話している間、サラはその間一言も喋らなかった。難しい顔をしてただじっと俺の話に耳を傾けていた。
「なんだ、その男めちゃくちゃ怪しいじゃないか」
話を聞き終わったあと、レンジはそんなことを言った。
「まあ、どう怪しいのかっていわれたらよくわからないが、ただタイミングが良すぎるっていうのは気に なる。俺たちが竜について調べ始めたとたん、いきなり目の前にそんな男が現れるんだからな」
「もしかしたら、その男がさっき話にでてきた旅人かもしれないぜ」
レンジが俺の考えていたことを口にした。しかし、世の中そんな簡単にできているのなら苦
労はしないだろう。
「そいつ、大剣みたいなものは持っていなかったのかよ?」
「いや、小さい荷物がひとつだけだったよ。そんなものが近くにあれば嫌でも目につく」
「まあ、そうだよな。そんな簡単にはなしがつながるわけないか。だけどその男、その絵本以外にもなにか知っているようだったんだろ?なら、また話を聞きに行けばいいんじゃないか」
「まあ、そうなんだが。サラがどうもな」
「サラちゃんが?」
言われてレンジはサラの方を見る。
先ほどから一言も喋っていないことに気付いたようだ。
「サラちゃん、どうした?」
レンジが心配そうに顔を覗き込む。
「……その男とは会わない方がいいと思う」
「何かあったのか?」
サラの様子に、レンジは不思議そうな顔をする。
「まあ、な」
俺は適当にごまかした。




