返事がない、ただの一文無しのようだ…
「俺はいくよ」
真剣な眼差しでそう告げた。
「でも、正直一文無しのあんたじゃ、
行っても死ぬだけよっ!」
マリアが止めにかかる
こいついきなりシリアスになったり、
ふざけたり、イマイチペースが
つかみづらい
だがこいつの言っていることは正しい
元の世界はおろか、よく知らない世界で
一文無しで遠くにいくのは死ににいくよう
なものだ、多分三途の川すら渡れないだろ
う
「元の世界に帰るために、俺の生活を変え
るために、この状況を利用しない手はない
んだッ!」
「じゃ〜、マリアあんたが付いていけば
いいじゃな〜い」
「ハ〜〜〜⁉︎」
「なぜこんなつるぺたと⁉︎」
「なぜこんな変態と⁉︎」
アッティラの突拍子のない意見に
思わず異口同音に応える
「誰が変態だぁ〜、コラッ!」
「誰がつるぺたよォ、元の世界に
バラバラにして送り返すわよッ!」
言い合いを続ける二人に呆れながら、
アッティラが割り込む
「マリアさん、いま所持金は〜?」
それを聞いて、マリアがドキリとした
さっきまで元気に言い合っていたのに
黙りこむ、瞳は大きく開かれ、
若干額に汗をかいているようにも思う
「あ〜ら〜あらあら〜、マリアちゃ〜ん」
追い討ちをかけるようにアッティラが
言った、相変わらずバーのテーブルの上で
片膝を立てて両手を後ろについて座ってい
る顔にはあからさまな笑みが浮かんでいる
、怖い
マリアは急に取って付けたように、
仕事の内容の話を振ってきた
こいつアッティラに何かあるのか⁇
そんな俺の心の中の疑念を察したように
アッティラが
「いま着てる服かわいいな〜、
どこで買ったの〜、いくらしたのかな〜」
とマリアの着ているフリフリのついた
白いワンピースと羽根の装飾のついた
ブーツを指していった
足をハの字型に投げ出しでマリアが崩れた
「来週まで待ってくださ〜い、ぐすんッ、
ちゃんと返しますから〜、
お願いします、マスタァ〜」
なるほど、そういうことか、
一人で納得しつつ、このつるぺたにも
以外とかわいいところがあるなっと思った
ん?待てよ、
ということは
「お前も一文無しかよッ!」
思わず叫んだ
この会社かなりヤバいぞ、
社員に破産しているやつが二人もいるのか
よッ!
「はたらけっ!マリア〜」
アッティラの叱咤激励が響く
「はーい、マスタァ〜はたらきますぅ〜、
ぐすんッ」
マリアが涙ぐみながらそう言った
という訳で、同じ境遇の同業者が増えた