返事がない、ただの旅立ちのようだ…
もしかして、俺がやったのか⁉︎
もしも魔法が本当ならば…
俺の魔法はぶっしつてんそうまほう、
物質…てんそう…転送
そうか!つまり俺の魔法は何かを
ワープさせる魔法なんだ‼︎
って何当たり前のように魔法とか
言ってんだよ‼︎そんなの…あるな
まぁこのことは黙って置こう、面倒だ
結局ブラは見つからなかった、
何処まで飛ばしたんだよッ
感覚的に30分くらいの捜索だったが
流石にマリアも諦めたようだ、
世の中には常識では説明できないことも
ある、うんうん
時刻は8時くらいか、宿舎の外が騒がしい
「まぁいいわ、そろそろ気持ちを
切り替えて出勤しましょ」
「あぁ」
ほんとんど呻きに近い声をあげる
いろいろ疲れた
「何腑抜けた声出してんのよッ‼︎
男ならもっとシャキッとしなさいッ‼︎
今度そんな声を出したら承知しないわッ」
「わりぃ、ちょっとダルイ」
身体の疲れを尻目に思考はよく回る
俺の魔法はなぜ発動?したんだ
そして、どうしてブラなんかが、
初めてワープさせた対象なんだ?
玄関にむかい、ドアを開けて家を出た
宿舎は会社に隣接するかたちで
建てられているので、すぐに着く
中に入ると、数人の社員がいた
「あら〜、ゼノンちゃ〜んマリアも
おはよう〜」
「おはよう」
「おはようございます」
「いいかいあんた達、
これが異世界からお越しなすった、
新社員ウチの希望神代ゼノンよ〜
よくしてやっておくれ〜」
歓声が上がる、人生で人にこれだけ
奉られたのは初めてかもしれない
こっちに来てから、あっちで
できなかったことが、いともたやすく
望んでいないのに起こる、
そんな状況に戸惑いをおぼえ恐縮して
いると
「ほら、あんたも黙ってないで
なんか言い〜な〜」
「どうもありがとうございます、
ご紹介にあずかりました通り、
神代ゼノンと申します、よろしくお願い
申し挙げます。」
ドッと笑いが起きる、
堅すぎだろ、よろしくゼノンとか、
温かい野次がとぶ
そんな自己紹介もほどほどに
「それでは、報酬を配りま〜す〜」
みんながざわめく
「まず、ドライ・ジーンズとウェット・
ジーンズの一味には、西のウェーバー国
テスラシティーへの食料の輸送に関して
報酬300万円が出ているらしいから、
中央区の窓口で受け取るよ〜に」
300万かすごいな、これはもしかしたら
意外とすぐに借金返して帰れるじゃないか
隣にいるマリアはへースゴイ〜とか
言っていた
「おい、マリアいつここを発つのか?」
「何時って今日に決まってるでしょー
そうじゃないとあっちに着く前に
決着ついちゃうし、そうなれば
仕事は消滅しちゃうからね〜、
早い所片付けて、アッティラに返済しない
といけないし」
「てなわけで東に出発!」
俺は俺たちはたった二人で旅に出ることに
した。
だが、その前に装備を確認するから、
外で待っててと言われ、会社の外で待つ
会社は住宅に囲まれている、
人々は広場的なところで薪を燃やし、
木の椅子に座って雑談をしていた
暇だったので話しかけてみる、
知見が広がるかもしれない
「すいません」
「どうしたにいちゃん、ここじゃみねぇ顔
だな 」
「いや、新入りで」
俺が話しかけたのは数人いた中の
おっさんで金髪で農夫のような格好をして
いた、どうやら朝から酔い潰れているよう
だ、
「そうか、あんたもアッティラねぇーさん
とこの大変だろ」
「まぁぼちぼち」
「まぁ頑張りな、おぉマリアちゃ〜ん、
元気?〜」
振り向くとマリアがいた、昨日と違う
格好で来た、腰には短剣?を帯びていた
「ごきげんよう、おじさま、
朝からそのようでよろしいのですか?」
なんだこいつ⁉︎急にいいとこの娘みたいな
喋り方しだしたぞ!
「あっいっけねぇー、叱られるぁ〜」
と言って酒ビンをほっぽり出して、
ふらふら歩いて行った
マリアが頭を抱えため息をつく
「バードさんはあれでも昔凄腕の傭兵
だったらしのよね〜、
気を取り直して行きましょ!」
そんなマリアの明るい笑顔とともに
俺たちは歩き出した。
住宅街?を突っ切ると門がありそこに兵士が
二人ほどいた、俺たちから見て左手には
兵士の詰め所と石の砦が築かれている
高台には見張りもいる、
流石に8つの国に囲まれているだけあって
警備はかたいようだ
「止まれ、貴様ら何処へむかう!」
「東のエルドラドですわ」
「シナイ王国発行の交通証明証はあるか」
マリアは腰に帯びていた袋から丸められた
例の送り状を取り出す
「うむ…何々…あー東の戦争の援護の
件で…なになに…あー “さすらいの吟遊詩人”の方でしたか、そういえば最近旅人が何者かに襲われ
るという事件が多発しています、
道中お気をつけて」
「ありがとう」
マリアが笑顔で対応する
ギィと木が軋み門が開いた
目の前には大草原と青空が広がっていた