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4/22 放課後 [入部勧告:料理で釣る]

「つくしんぼ、放課後職員室に来るように」

 そう先生に言われたらしい。

 言われた岡さんはというと、今から襲い掛かってくる狼を目の前にした羊のように震え上がってる。

 いや実際震えている。

「行ったら電撃ビリビリさせられるんじゃないですか……!?」

「そうはならんと思う、多分。3バカに対してやってたのと同じように呼び出す必要ないし」

「で、でもカード爆発させてしまいましたし」

「俺も燃やしたわ……」頭を抱える。

「い、今から職員室に行くのが怖いです……」

 いたずら見つかった小学生みたいな事を言う。

 少し考え込んで、岡さんに言った。

「先生からの個人的な話かもしれないから職員室の中には入れないけど。途中までなら行こうか」

 泣きそうな顔をしながら岡さんは頷く。

 そこまで怯えます?

「と、言うわけでこっから先は俺ついていけないんだけど」

 現在職員室前。『職員室』と印字されている出っ張り看板の下、引き戸の前で立ち尽くしていた俺達二人。

「あ……あわわわ」

 泡吹きそうな岡土筆さん。いや、泡吹いてる。今にも倒れそうだが。

「しっかりしな、よ」

 そう言いつつ、岡さんの手を両手で握る。今度は爆発しないだろう。

 向こうもはっとしたのか、立ち直ったようだ。

「戻ってくるまで待っておくからさ。じっくり話聞いてきな」

「……は、はいっ!」

 今度は元気の良い声。多分今度は大丈夫だろう、顔が若干赤くなってるのが気になるけど。

 魔法の影響だろうか?


 炎クラスが他クラスより早く終わったため周囲には誰も居なかったが、段々と生徒達が溢れてきた。

「人待ち?」そう聞いてきたのは水クラスの指月。

「まあそんなとこ、クラスの方はどうだった」

「あー、うん。絵を書いてた」

「魔法の授業なのにか!?」

「無色のインクに色を付ける呪文だったっけ。皆うっすい水彩画が出来上がってました」

 そりゃまた。ズラリと並んだキャンバスに筆を持って困る生徒達の姿を思い浮かべる。

「ちなみに炎クラスでは?」

「エスパーカード相手に燃やしたり爆発起こしたり」

クラスで透視できた人物もいた、3馬鹿含めて。ただ、燃やしたり爆発する変な挙動をしたのが俺達2人だけであって。

「すげぇ」

驚いた顔をする指月。だが、目的はそうではないのだが。

「いや、でも普通透視が目的だし。これがもしスパイ活動で、相手の行動を確かめるためにいちいち壁を破壊するのはまずいから……」

「壁を透明にすれば良いんじゃないかな?」

「そんな魔法習ったのか」

首を降る指月。それと同時に若干笑いながらであった。

「男女間の健全な精神的育成に問題が生ずるとのことで教えて頂けませんでした」

 それはざんね……いや、どうして健全でない方向に会話が進んでいってるんだ。

「指月は魔法の方どうだったよ」

「水が沸騰した」

「人間ケトルかよ」

「あー!先生とおんなじ事言ってる!どうせなら人間ボイラーの方がカッコイイのに!」

 ……カッコイイ、か?

 そんな話をしていると、何やら両手にぎっしり詰まったビニール袋を持っている白石先輩がやってきた。えらく重そうにしているが、一体何が入っているのやら。

「2人ともお疲れ様!今日が魔法クラスの初日ですっけ?」

「水クラスです、なんか勝手に水が沸騰しました……」

「炎クラスでした、カード間違えて焦がしました」

「初日から腕白なことしてますねーどちらも」白石先輩も苦笑いである。

「袋の中身は何なんです?」

指月の問を待ってましたとばかりに白石先輩は頷く。

「新入部員歓迎の一環として、今日から料理を作って人を呼ぼうかと思ってて!」

「ああ、焼き鳥屋さんがタレの匂いをうちわで仰ぐアレですか」指月くんの容赦無い発言。

「指月君よ、他の言い方があるんじゃ」

「そうそれです」

 あっけんからんと言ってしまう先輩であった。

「白石先輩もあっさり認めないでください」

「事実は事実ですからね」

 さいですか。

「二人はどしたの? 誰かさんを待ってたりするかしら」

「二人、というか俺がなんですけど」

 岡さんを待っていることを伝える。それを聞くやいなや、ぐっと俺達との距離を詰めて寄ってくる白石先輩。二人揃ってちょっとびっくりした。

「分かったわ、今日の目的はその子の勧誘にしましょう! 料理の下拵えしてくるから!」

 そう言って猛ダッシュで俺達の元を去っていく先輩。

…………足が早い。


「嵐のような人だねぇ」

 ヤレヤレと言いたげに指月が呟く。それには全くの同意だ。

 第一岡さんが戻ってきた途端泡吹いて倒れる可能性だってあるっていうのに。

「――長嶺、さん」

 ふと後ろを振り返ると、岡さんが職員室から戻ってきていた。

 両手に彼女の頭に届くほどの大量の資料を抱えて。しかもその資料が崩れかけのジェンガよろしくゆらゆら揺れてる状態で。

 しかも表情に生気が無え。これはヤバイ。慌てて指月と共に駆け寄って支える。

「……なにこのお神輿状態」

 指月のツッコミ。

「そーれわっしょいこらしょい」

「あああわわわっ揺すらないでください」

 岡さん、そんな分かりやすく慌てなくても。第一揺れてる原因アンタじゃん。

 ひとまず何分割かに分けて床に置いた。

「た、助かりました……」

 岡さん、肩で息をする。

「凄いねこれ、一体何の資料?」

 指月が山を小分けにしつつ尋ねる。よく見るに、教科書らしい本やプリントをクリップでまとめたようなレジュメ、あと何故か目覚まし時計。

……何でだ。

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