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4/21 午前中 [魔法の目撃者、調理中]

 翌日朝のHRは、担当教員である大幡の一声からだった。

「これから少なくとも3年間、魔法について学んでいくわけだが。魔法とはどのようなものか説明できる生徒はいるか」

 分からないので手は挙げない。誰しもが沈黙すると思った。しかし2人ほどがスッと手を挙げる。

「よし、じゃあ沢渡」

 前の方に座っている男子生徒が先にあたる。

「現代科学において発生し得ない反応を起こし、熱力学第一法則を覆しうる能力です」


 それを聞いても俺自身にはピンと来ない。同じような反応をする生徒も居たが、何人かの生徒が驚いたような顔をするのを見るに驚愕的な事なのだろう。大幡先生も頷いている。

「良いぞ沢渡。何らかのエネルギー源から魔法の力を引き出しているという学説も出てきているが、それが何なのかは未だに分かっていない。だから現状では何もない所から魔法というエネルギーを取り出していることに成る」

 黒板にデカデカと『エネルギー』と書きながら言う。……これはノートをするべきなのだろうか。

「熱力学第一法則はエネルギー保存則とも言われエネルギーの合計量は一定に保たれるという意味だ。空気中の熱を奪って冷やす、無から熱を生み出すといった近年の魔法で見られる現象は今までの科学では説明できない」


 そんな事をいきなり言われてもチンプンカンプンである。大体科学と魔法は両立するのか、水と油みたいなもんだろう。卵でも混ぜれば美味しくいただけるだろうか。

「魔法というのは現在の科学や社会の成り立ちそのものを変える可能性がある。良くも悪くも、その変化をより良い方向にする目的で君達が集められた」


 思考がマヨネーズに寄りつつも、ここだけは理解できた。魔法によって社会が変わるのを恐れて、社会のほうが一時的な隔離政策を取ったということだろう。

「校内での魔法の使用は禁じられていないが、それによる事故や災害に関する責任は追求される恐れがある。魔法を使いたい場合は専用の実験棟などがあるので使用許可を取ること」


 伝えたい一番大事だった事はそこなのだろう。今朝学校に来る最中も、転移魔法の失敗だとか言いながら全身から焦げた臭いをだしている上級生を見た。髪の毛は完全にアフロだったし。多分髪の毛だけ後でセッティングしたろと思う。自分の魔法の適性や何が使えるのかも分からないが、無闇に使うのは避けたい。


「ん、どうした若竹」

 どうやら、後ろの方に居た生徒がまだ手を挙げていたらしい。

「先程の魔法のエネルギー源についての話ですが」

 振り向いてみると、女生徒は立ち上がっていた。

「先生の仰っているエネルギー源は、宇宙の膨張に関わるエネルギーでしょうか」

 教師が手元の出席簿を見て、何かを確信したかのように頷いた。

「……若竹、そうかどこかで見た苗字だと思ったが。スマンが今はホームルーム中だ、その議論は後でも良いか」

 わかりました、と生真面目さを含んだ声で女生徒は座る。緊張の中ホームルームは淡々と進んでいった。


――――


「何だったんだろうな、今さっきの」

 校長からの話と部活動紹介のため、体育館に移動中。周囲がざわついている中、話しかけてくる男子生徒がいた。

「分からん、苗字で納得していたけど」

「そうそう、僕の苗字は指月で下の名前が直」


 ……いや、聞いてない。どうしてそういう流れになったんだ。

「……俺は長峰。長嶺翔」

 流れからそのまま名乗る。周りもガヤガヤしながら移動しているので、2人ぐらい話していても誤差だろう。

「部活動紹介が今から始まるわけだけど、何処か部活に目処はついているかい?」

 その話題を振られた事で、折角忘れかけていた漬物部のことを再び思い出してしまう。昨日頂いた白菜の漬物は美味しく頂いたものの、だからと言って入部の可能性が上昇したわけではない。そもそも現状は部活と言って良いものかすら分からないのだ。

「いや、特に」

 そう誤魔化しておく。相手の方はというと、ふーんと適当な相槌が帰ってきた。

「僕としては色々と面白い部活に入ってみたいなと思う。学校自体が特殊なんだから、風変わりな部活の一つや二つどころじゃないだろうからね」

「変な部活に入って大変な思いをするのは嫌じゃないのか」

「嫌になったら退部が出来るのが新入生の良い所だと思うんだ、僕は」

 そうでっか、とこちらも気の無い返事を返す。


――――


「いや納得出来ないってアレは」

 教室に戻り、放課後になった後すぐに指月が言ってきた。学校開始2日目なのでまだ授業などは本格的に始まっていない。明日から学業が始まるので部活動は精力的にPRするだろう、と風のうわさで聞いている。

「知らんて」

 第一、俺に言われても困る。

「面白い部活動は愚か、天文部もSF研や落研おちけんも無いだなんて!」

「部活動と別枠で公認サークルも有るって先生も言っていたからな、そういう体型でやっているんじゃないか」

 現にSF研は昨日見た。実際に活動しているかどうかまでは確認していないので何ともいえないのだが。


「それならコッチから探しに行くっきゃ無い、放課後に部活棟に付き合ってくれるかい」

 いきなり個人的に盛り上がっている。特に今日の予定もないし、恐らく放課後になったら例の先輩が待ち構えている可能性が有る。生け贄は多いほうが良いし。

「部活棟に行く前に、一つ紹介しておきたいところがある」

 やはり、というべきか指月はワクワクした表情で食いついて来た。それが撒き餌だということに気が付かないまま。

 教室をでると大勢の先輩たちの波に潰されそうになりながら白石先輩が待っていた。ブンブンと手を振ってコチラを呼んでいる。

「どうも、白石先輩」

 予想しているとはいえ、ズラリと並んでいる先輩のなかピンポイントで手を振られるのは少々気恥ずかしい。人混みの中を3人連れで何とか抜けていく。



「この子ひょっとして新人ですか!?」

 喜びを漲らせて指月の手を両手で握る白石。握られている側の指月はというと滅茶苦茶ドギマギしている、どうも女性耐性が無いらしい。

「こここ、この部活ってなんなんですか」

慌てた表情のまま尋ねる指月。

「漬物部」

 サッと答える。へ、と間の抜けた返事が指月から帰ってきた。

「そう、漬物部です!」

 手を握ったまま力強く白石も答える。暫くポカンとしたまま立ぼうけになる指月が、やっとの思いで頭を振る。

「おもしろい部活に入りたいとは言ったかもだけど、ヘンテコな部活に入りたいとは言ってなくて」

「ダメ、ですか」

 シュンとした様子で手を離した白石。ああいやそんな訳じゃと更に慌ててゆく指月、このままここで話しても仕方が無い。そもそも俺自身入るかどうか考えていないというのに。

 先に部活棟に行こうと2人に提案するとそうですねと白石は答えた。

「ぜひとも漬物を頂いてもらいましょう、また今日野菜が大量に余ってしまったので」

 その量の野菜を一体何処から持ってきているんだろ、と疑問に思ったものの口には出せなかった。


――――


 部活棟に往く最中も、様々な部活が勧誘をかけている。個人的に珍しいと思ったのはアメフト部が置かれている事だった。ガッチリとした全身防備の上級生たちに勧誘される俺たち新入生も見かける。もしもコチラが1人きりだったら躱せる気がしない。勧誘的にも、逃走する場合にも。そんな事をぼんやりと考えながら部活棟の近くにやってきた。

 この建屋は4階建てで現存倉庫になっている仮の部室はその更に隅っこに有った。昨日見た部室の様子を見るに、部活ではない公認サークルや様々な部活の倉庫はまとめて4階にあると踏んだ。色々な集団が不法占拠していると言うことを白石から聞いた。勿論漬物部もその1つである。


「しかしこうしてみると凄いねぇ」

 部活棟を1階から見上げて指月が呟く。中学校や元々入る予定だった高校では部室というものが存在せず(正確には体育会系の倉庫は有った)、部室だけが集まって一つの建物になっているのは俺にとっても新鮮だった。


「少し登るけど良いですか」

 そう白石が声を掛けた時、物凄い突風が吹く。何かと振り向いてみると高速で自転車が通りすぎたようだった。乗っていた人物は慌てた様子で自転車から飛び降り部活棟の階段を駆け上る。何が起こったのかわからずポカンとする俺達。しばらくすると、叫び声が聞こえる。

「しまったァァァァァァ!?今日料理部も菓子部も出張ってるじゃん!手詰まりじゃん!ジャジャジャジャーン!」

 3人で顔を見合わせる。いや最後の絶対いらなかったろ。行ってみましょうと白石、それを聞き楽しそうな表情を指月は見せた。……正直俺としては不安なのだが。

 二階に上がってみると自転車の彼は文字通りひっくり返っていた。両手で頭を抱えつつ。

「どうされました?」

 白石が尋ねる。すると頭を抱えた状態のまま彼が応じる。

「昼食が……新歓に持っていく弁当が落っこちて……全滅で今から調理じゃ……オアアアアアアア」


 再び床でもんどり打つ自転車部員(推定)。正直何も知らずにこの現場に立ち寄ったら俺達が喧嘩で彼をボコボコにしたかのように見えそうである。とってもひどい冤罪。

「今からって、今何時だっけ」

 授業が明日からなので今日は終業が早い。

「11時半」

 腕時計を持っていた指月が答える。しかし、今から料理を作ると考えれば難しい。サラダなどの調理が簡単なものならまだ可能性はあるが、確認しよう。

「何を落としたんですか」

「かぼちゃの煮物に鶏ハムとチャーシュー、あと卵焼きとおにぎりと……」

「メイン級じゃないですか!」

 悲鳴のように指月が言う。間違いなく今からの調理では間に合わない。下ごしらえを考えると半日掛かる場合も有る。手早く作れそうな煮物でも運搬時間を考えると厳しい。おにぎりですら、個数によっては一人で作るのは厳しいだろう。

「料理部と菓子部の人達なら魔法調理が出来るから手早く行けると思ったけど、今はあの人達も新歓で出張ってて!」

 魔法調理という言葉に聞き覚えは無いが、とにかく時間短縮の術は無いらしい。

「お菓子か何かで間に合わせる事は出来ないんですか」

 応急策を弄してみる。しかし頭を振って彼は答えた。

「他の連中が軽菓子類と遊具とかを持って行ってるから、食べ物は今さっき落とした奴が全部なんだよ」

「……惣菜を何処かから買って詰めたりは」

 思いつく案を出す。

「今日は校内給食が無くてな、近場の店を回ったけど売ってあるのは食材だけ。殆どが生徒が買って欠品してた」

 ダメか、と思わず声を漏らしてしまう。


 しかし黙って聞いていた白石は一つ質問を出す。

「食材は今から買えますか」

 恐る恐る頷く自転車部員。分かりましたと白石は答えとんでもないことを言ってのけた。

「今から、全部作りましょう。メニューは全く同じに」

 恐らく俺は、何を馬鹿なといった表情をしていた。


「…………先輩、流石にそれは無茶です」

 呆然とした顔のまま指月が答える。

「頼まれてくれるのか! でも何処で調理するんだ」

 自転車部員は倒れた体制からスックと立ち上がり買い出しの用意をし始める。

「自転車部の名前で部活棟の実験室、借りて下さい」

 流石は先輩と言うべきか、部活棟にそんな部屋が存在するのは今初めて知った。オッケ言って駆け出して事務室へ向かった彼は俺達が驚く早さで鍵を借りてきた。十数秒も経っていない。

「食材を買ってくるから実験室の用意頼む」

 そう言って自転車部員はチャリであっという間にすっ飛んでいった。

「申し訳ないけど、手伝ってもらえないかしら」

 白石がこちら2人を見据えて言う。

「大丈夫、ですけど本当に出来るんですか」

 指月の疑問も最もだが、当たり前のように巻き込まれている俺自身にやや戸惑っている。

「第一、料理はそんなに得意じゃ無いですよ俺」

 一人暮らしをしていた時期も有ったが、基本は冷凍食品と惣菜で済ませていた自分に、決して料理の経験値が有るとは言えない。

「包丁は握れますか? それが出来れば大丈夫。私の方は別の用意が必要になるんだけど」

 よし、と小さな声で気合を入れるようにした後白石先輩は実験室の鍵を開ける。実験室という名前に反して部屋の中は家庭科室のようにキッチンシンクが数台、フライパンや食器、包丁やお玉などの調理用具が大半を占めていた。

「実験室、っぽくは有りませんね」

 ぽつりと指月が言う。そうねと白石先輩は頷く。

「この部屋は実験室のドアから繋がっている部屋の内の1つ。調理を目的とした実験を行う場合にこの部屋が自動的に選択されるようになっているんです」

 へ、と思わず声が出た。部屋が選択される?


「とにかくお湯を沸かしましょう。包丁を洗ったりも出来ますか」

 そう言うと戸棚から鍋を取り出す白石先輩。おずおずと俺達2人も食器類を取り出して洗剤で洗う。その最中に今後の方針を指月が尋ねた。

「調理するといっても、今からメインの料理を作るのは厳しくないですか? 1時ぐらいまで待ってもらうとしても、今からの時間の猶予は一時間半。調理は一時間以内に済ませないといけないですよ」

「そうですね、一時間。一時間で全て終わらせます」

 先程までのおっとりとした、それでいて明るい雰囲気は白石先輩から全く感じられず。今の彼女には間違いなく真剣さと焦りが見えていた。

 少し待つとガラリと実験室のドアが開き、自転車部員が雪崩れ込むようにして食材のビニール袋を持ってくる。


「……火が、必要な、ときは、言って、くれ」

 そう言ってゼエゼエ言いながら床に倒れる。

「分かりました。まずは先程のお湯で熱湯消毒を行いましょう」

 そう言うと、自転車部員の落とした弁当箱を洗剤で洗った後熱湯を掛ける。俺達も同じように包丁などの調理器具に熱湯をかけてゆく。

「長嶺くんと指月くんは卵焼きとおにぎりの箱詰めをお願いします。私達は煮物と肉料理の味付けをします」

「おし、了解です」

 腕をまくるようにして指月が答える。俺自身も軽く頷く。おにぎりだけは米を今から炊くことが不可能だったので、自転車部員があちこち駆けまわってなんとか調理済みのものを調達してきた。なので、俺達の今後の目的はおにぎりの箱詰めと卵焼きになる。


「早速ですが、火の方を頼めますか。私は凝固魔法の用意をします」

 白石先輩は自転車部員に向き合って言う。凝固魔法というまた聞き覚えの無い単語がやってきたが、今はそれどころではない。俺達はフライパンを用意して卵焼きの準備にとりかかった。

「……卵焼きってどうやって丸めるんだい。僕はスクランブルエッグは得意なんだけど」

 フライ返しを持ったまま指月が言う。

「両方作れば良いんじゃないか? 俺は卵焼きを作るから炒り卵の方を頼む」

「その手が有ったか、有難う」

 そうして指月はフライパンの中身を菜箸でかき回し始めた。


卵のほんのりと甘い臭いが立ち上るが、今は試食の時間も無い。砂糖小さじ1、塩と醤油を少々。徐々に固まり始めてきたら卵をゆっくりと持ち上げてフライ返しで持ち上げる。まずは1回分。もう一度とき卵を注いで暫く待ち、再び先程の卵に繋いでゆく。段々と大きくなってゆく卵焼き。指月の方はというと、スクランブルエッグに刻んだハムを入れようと包丁を握っていた。

「包丁って何の手だっけ、孫の手?」

「猫の手」

 孫の手だとナイフとフォークみたいになってしまう。

 卵焼きの目処が立った当たりで白石先輩の様子を見る。だが、彼女と自転車部員は未だに調理に取り掛かっておらず何かをキッチンシンクの上で書いている。二人共紙の上に幾何学模様を書いており、その行動に調理の準備と思わしきものは全く無い。

「お二人共、何をされてるんです」

「普通のやり方じゃ絶対に間に合わないんでしょう。だからこの実験室で魔法を使うの」

 魔法。そうだった、つい最近越してきたばかりでイメージからあまり浮かんでいなかったがここでは魔法が存在する。あっという間に料理が出てくるような魔法が有るのかもしれない。

「魔法で料理がポンと出るんですか!?」

 指月も期待の目で2人を見つめる。

「や、そこまで便利なことは出来なくてね」

 ようやく復活した自転車部員が立ち上がり頭を振った。

「まずはかぼちゃの煮物です、カットお願いします」

 いつの間にか2人は割烹着とエプロンに着替えている。俺達も私服のまま調理したのは不味かったかなと思いつつも完成した卵焼きを切り、弁当箱に詰める。……熱っつい!


「よし、完成」

 卵とハムの炒めものが完成しこれで2品。おにぎりも加えれば3品である。鶏ハムとチャーシューのカットだけ頼まれたので2人がかりで切っておく。先程の孫の手の件で果たして指月が包丁慣れしているのか不安ではあるが、一応切れたので問題はないだろう。

 向こうはというと、かぼちゃの解体を終えて鍋に出汁とかぼちゃを入れた後であった。


――――


「用意は良いですね」

 自転車部員と顔を見合わせるようにして白石先輩が尋ねる。彼も頷くと、ボン!という音の直後かぼちゃを入れた鍋が50cmほどの火柱に包まれる!

「うあっ」

 思わず声が出てしまった、という感じの指月。俺も包丁を持っていなかったら驚きのあまりすっ転んでいたかもしれない。よく様子を見るに、自転車部員は何かを呟いている。


「鍋の温度を加温し90度以上に……原子内部に於ける重水素を反応させ……分子高速化により熱反応……」


え、何か、ものっそい危険なことをしておられませんか。


「キラル中心を捕捉、結合の強化、凝固反応開始、呈味性ヌクレオチド及びコハク酸の集中を確認、原材料に細分化」


 もう一人も炎に向かって右手を翳し、何かを呟いている。2人の着ている服も、魔法の影響か心なしか風か何かに吹かれているかのごとく揺れている。


「白石先輩!?」

 スクランブルエッグを掻く手が止まり、少し焦がした臭いを出し始めた指月が慌てつつ尋ねる。次の瞬間、二人の叫びが重なった。


ProtostarいちばんぼしのLuminousかがやき!』


Selektivit(とーって)ät Aktiverおいしく Transportなーれ!』



 ドン、と爆発とも破裂ともわからない音がしたと思うと部屋が一瞬輝く。あまりの眩しさに俺達は目を瞑る。




「もう大丈夫よ」

 さっきまでの真剣な表情はウソのように、にっこり笑いかけながら白石先輩はコチラを振り向いた。

「うひー、学校春休みだったから久々で疲れた」

 炎を出したと思われる自転車部員は再びぐったりしている。

「あと2回、よろしくお願い致します」

 恐らく残りの品数だろうか。言葉も無いと言わんばかりの自転車部員。言葉も無いのはこちらのほうだというのに。

 気が付くと指月と俺の卵はほとんどが茶色になっていた。

「…………作りなおそうか」

「……へーい」

指月の参ったような声。

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