みせもの
“見世物”。
それが始まった日、一番に“見世物”になったのは
無論、死刑宣告された僕だった。
「くすくす。くすくすくす。」
「笑ってないで戦ってくださいよ。」
舞台は、いつも死刑囚達が朝に集まる広い、グラウンドのような場所。
ただひとつ、いつもと違うのは・・・
そこに、透明な板が僕達二人を囲うように、100㎡ほどの場所に置かれている
ということだ。
「くす・・・。あれれ。Sクラスくん怒ってる?くす。」
Aクラス処刑人。
武器は剣。
男。
“見世物”とは、僕たちが競馬の馬になるということ。
僕が殺されなかったら、僕の勝ち。
向こうが殺したら、向こうの勝ち。
ルールは、ない。
負ける気は、ない。
早く終わらせて、寝たい。今日は早く起こされたので。
「くす。Sクラスくん、私きみのこと嫌いなんだよねえ。知ってるでしょ?」
彼は昔からの知り合いだ。
処刑人だったときから、ライバル視されている。
「知ってますけど。早く殺してみてくださいよ。ほら。」
両手を広げて見せると、彼は僕に向かってきた。
剣を僕の心臓に向けた。
「腕がそろそろ鈍ってるんじゃないかな、あああ゛!!」
突き。
彼は、僕を斬らなかった。
突き。
刺さって身体を通り抜けるように、
突き。
「あしは鈍ってませんよ。」
足。脚。
あしで、受けた。
足の、裏。
囚人用の、粗末な靴を・・・
Aクラス処刑人の剣は、通り抜けた。
靴を通り抜けた。
僕の足に刺さった。
普通なら、通り抜ける。
痛みに悶える。
普通なら。
僕なら。
僕は普通とは違う。
「何で通り抜けねぇんだよ・・・」
「僕だから。」
心臓の前に足を上げ、剣の切っ先を蹴るようにとめた。
少しづつ、血が滴る。
「通り抜けろよ・・・」
「無理ですよ。」
「痛いって云えよ・・・」
「そうでもありません。」
「しねよお・・・」
「諦めてください。」
「しぃいいいねええッッッッてんだろオ!!!!!」
シャンッッ!
足から剣が抜ける。
「らあ゛あ゛あ゛あああああああああッ!」
今度は・・・斬り。
さすがはAクラス。
寸分違わず、首筋へと吸い込まれた。
その前に僕の右手のひらに吸い込まれた。
また、血が滴る。
「くす・・・せめて切れろよ。私がきみのこと嫌いだって知ってんだろ。
なのになんでそんなんなんだよ。」
そんなん。
僕は、その言葉に少しだけ。
ほんの、少しだけ、首を傾げてから、
いちおう、こう答えてあげました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生まれつき?」
剣が、動いた。
柄が、彼の手から離れた。
左の手のひらに、柄が触れた。
それをつかんだ。
そのまま、前に突き出した。
そして、斬りつけた。
彼の、首が飛んだ。
観客席へと。
悲鳴が沸き起こる。
「ああ・・・ごめんなさい。もう少し、加減した方よかったですかね。」
彼は、首から鮮血を噴出しながらごとりと倒れた。
―Winner <孤独>Sクラス死刑囚
いつもより短くなった気がしますね。
すいません。
自分で言うのもなんですが、首が飛ぶとか想像したら怖いですね・・・。
では、推理してみてください。
何故、彼は痛くないんでしょうか。
皆様の推理待ってます。