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飾りの翼  作者: dietian
1/1

飾りの翼1

僕には翼がある。

それは感覚しかないこの空を仰ぐことすら叶わない

ただの飾りの翼。


この世界で僕が知る限り、いやこの世界に

翼を持っている人は二人。

僕と僕の母。

いや、僕一人だ。

母は三年前に死んだ。

メディアに公開をする大体一週間くらい前であった。

母は唯一空を飛べた人だった。

死因は長期間に渡って続けていた飛行訓練による

疲労による衰弱死。

心臓に病気を患っていたとも聞いていたが、

もとを考えればここまで無理をさせた。

研究者である父のせいである。

そんな父は母が死んだあと

母の亡骸はその後も研究に利用された。

僕は生まれつき専用の教育施設で

普通の学校と変わらない学習から

飛行に関しての訓練まで行った。

もちろん受けたのは僕一人。

その研究チームが言うには母が飛べた

理由について、体重が極端に軽かったこと、

翼の大きさが僕と格段に違うこと。

そして、羽を手足のように扱えること。

体が空に吸い込まれていくように

飛んでいく姿はまるで神話で見た鳥人のようだった。

あんなふうに僕が飛べる日が来るのだと

父達は期待をするのだが、僕は母を殺した研究所を

出なければならないと思っていた。


僕がこの日本に住もうとおもった理由はいわゆる消去法。

親の親戚にはアメリカ、イギリス、日本に住んでいる人がそれぞれいて、

イギリスは逃亡に失敗をした経験があるのでパス。

アメリカ国内となると、広い国土をもっているとはいえ

翼の研究チームがあることからやはり不安なところがある。

となると日本しかないと思った。

正直、英語がほとんど話せなったり

情報社会で過ごすというのにも少し抵抗があったが

やはり一人というのも何かと不便だろうと考えての選択だった。

これでも親の顔の広さというのも感心するところがある。


日本に着いたとき空港で待ち合わせをした

親戚のご夫妻に出会った。

笑顔で手を振っている様子にすぐに気が付いたが

その笑顔が僕の母親が死んだことを同情する気持ちを

隠そうとする作り笑いだと察すると自分から

ご夫妻に向かおうとする足が急に重くなった。

対面したとき、ご夫妻は母の死については触れず

軽い挨拶を済ませた後、「日本には有名な名所がたくさんあるのだけど案内しようか?」と尋ねられたが、気持ちの整理が出来ていない僕は首を横に振った。

車に乗ると空港を出てすぐ高速へと向かった。

日本での生活や僕の生活について話したが良く話す

奥さんの前には日本の観光雑誌がどっさりと積んであり、

観光を楽しみにしていたのだろう思うと

悪いことをしてしまったと後悔した。


その後はパーキングエリアで初めて和食のうどんを

慣れない箸を使って食べて夫妻の家に向かった。

家についてからは、僕の部屋はご夫妻の大学の

息子さんの家を出て使わなくなった

部屋を借りることになっている。

それからは足りない家具をそろえたり

学校への編入手続きをとった。

僕が学校に通うのもこれで2度目になる。

そう嬉しくも悲しくも思った。

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